皆さんがお住まいの町にも、一つは存在するのではないでしょうか?
決して目立つことなく、ひっそりと景観の一部となっている地味~な掲示物。
町内地図看板
「えっ、どんなやつ??」
と疑問に思った方は、ぜひGoogle先生に『町内地図看板』と尋ねてみて下さい。
おそらく、画像を見れば
「あぁ~コレね、あるある」
って反応になる方が多いでしょう。
僕の住む田舎町でさえ
複数場所で目撃された
脅威の出現率です。
この町内地図看板、これまで特に意識してこなかった方が殆どではないかと思います。
そもそも、町内に住んでいる人にとっては地図なんて不要ですから、空気みたいな存在になるのも当然ですよね。
ふと目に入ったとしても、これっぽっちの感慨も興味も湧かないでしょう。
たとえ誰かに「なぜこんなものがあるのか?」と質問されたとしても
「さぁ?観光客の為に、町内会が業者に頼んで作ってもらったとか?」
程度にしか答えられないとしても無理からぬことです。
少なくとも、僕は
そう思ってました。
そんな人畜無害な人見知りボーイ(ガール?)かと思っていた町内地図看板が、実は思わぬ闇を抱えているということを、皆さんご存じでしょうか?
開業して半年余り、ひよっこ個人事業主だった私ゆうき塾長も、気付かないうちに闇の中へと飲まれてしまっていました。
その闇の正体は
町内看板詐欺
というわけで、今回の記事では駆け出しの個人事業主に必見、意外と知られていない町内看板詐欺の実態と対策について解説していきます。
金払いの悪さで定評のある?私ゆうき塾長も一度は騙された闇に迫りますので、どうか最後までご一読いただきたい。
個人事業主以外の方にも
為になる内容ですので、
ぜひ見ていって下さい。
町内看板詐欺とは?実体験と被害実態
さて、町内看板詐欺とは一体何なのか説明する前に、まずは私ゆうき塾長が実際に体験した出来事について聞いていただきたい。
い…いや…体験したというよりは、まったく理解を超えていたのだが……。
あ…ありのまま、昨年に起こったことを話すぜ!
↑元ネタを知らない方は
どうかお気になさらず。
ゆうき塾長の実体験(1年目)
それは開業して半年程が経った頃の、とある平日の午後。
ガチャ。
「すみませーん」
聞き覚えのない大人の声がする方向に目をやると、ヨレヨレのYシャツを着た一人の中年男性が塾の玄関口に立っていた。
何だろう、新規の問い合わせかな?
なんて、夏休みに入ってポツポツと講習会の参加を申し込む家庭が出てきたものだから、僕は調子の良いことを考えながら挨拶する。
「こんにちは。どういったご用件でしょうか?」
「商店街に町内地図の看板を掲示しておりまして…こちら、新しく開業されたお店ですよね?」
「? ハイ、そうですけど…」
「この時期ちょうど年一回の地図の更新を行っていまして、こちらの店も新しく地図に掲載しますので、標識掲載料のお支払いをお願いします」
……えっ?
何々、コレお金払わないといけない流れなの?
町内会費的な、こっちの意思とか関係ないやつ?
強制? shouldじゃなくてmustの方?
「え……っと、もしかしてコレって絶対に載せなきゃいけないやつ、ですかね?」
「まぁ他の商店街の方々にも、皆さんご協力いただいてますからねぇ」
マジかよ…こんな田舎町の路上にある地図看板とか、全く宣伝効果ないだろ。
そもそも、町民が地図とか見ないだろうし、見たところで『そうだ、塾へ行こう!』なんて思考になるわけないよなぁ。
かと言って、観光客に学習塾の場所を知ってもらっても意味無いし、一体これ誰得の話だよ。
「…ちなみに、いくらですか?」
「一年間の契約で、標識掲載料3,960円(税込)になります」
うん、高いのか安いのか全く分からん。
チラシの印刷とか新聞折込に比べたら安いけど、宣伝って意味では20倍に希釈したカルピス並みに期待薄いし、明らかに無駄な金って思うと地味に痛いなー。
まだまだ赤字経営だし余計な出費はしたくないんだけど、でも生徒がいる手前でゴネるのもカッコ悪いし、そもそも今も授業中だし……。
「……わ、分かりました」
「それじゃあ、こちらの紙にサインして下さい————では、こちら領収書になります。じゃ、失礼しましたぁー」
バタンッ。
「おぅ……」
被害の実態と手口の特徴
——以上が、開業半年目にして私ゆうき塾長の身に起こった出来事です。
な…何を言っているのか分からねーと思うが、俺も何をされたのか分からなかった…。
頭がどうにかなりそうだった…。
催眠術だとか超営業テクニックだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……。
↑元ネタを知らない方は
どうかお気になさらず。
(本日2回目)
僕と同様の被害に遭った方は決して少なくないようで、ちょっとネットで個人サイトやSNSを調べただけでも10件以上の被害報告が見られました。
どうやら、似たような手口を行う会社は全国各地にあるようで、大まかな傾向としては
「●●標識社」
「●●企画」
「●●広告」
っていう感じの会社名になっていることが多いようです。
(僕が騙されたのは「●●企画」タイプでしたね)
※とは言っても、こういう名前は極々ありふれていますし、上記に当てはまっていても真っ当な会社という場合もあるでしょう。
名誉棄損で訴えられたら嫌なので、あくまで参考程度に留めておいて下さい。
ま、こんな零細個人塾の
ブログ記事を見て文句を
言う会社なんて無いとは
思いますけど。
僕の実体験とネットでの被害報告をもとに、この町内地図看板詐欺の特徴をまとめると以下の通りです↓
・訪問前の連絡等は一切ない
・さも払うのが当然という口調
・標識掲載料は3,000円前後
・料金はその場で現金前払い
・数か月~1年毎の更新制
……何というか
ヤバい臭いがプンプンしますね。
こうやって改めて見ていると
「いやいや、こんなの騙されるわけないってw」
と思ったとしても無理はありません。
でも、いざ突然やって来て何やかんやと捲し立てられると、不思議と冷静な判断が出来なくなるんですよ。
いや、本当
マジで。
町内看板詐欺で起こりうる犯罪行為
さて、ところでこの町内看板詐欺なるもの、法律的にはどうなのでしょうか?
アウト? セーフ?
一見すると完全アウトな感じがしますが、いかんせん僕を含めて多くの人間は法律に関して全くの素人。
もしも自身の店に前述したような輩がやって来た時に、犯罪行為が行われているという確証が持てなければ、相手に対して強い態度で臨むことが出来なくなるかもしれません。
一方、相手が違法なことを行っているとハッキリ分かれば、強気の姿勢で支払いを断ることが出来るでしょう。
知識があるって大事!
というわけで、以下では町内看板詐欺の手口において行われる可能性のある犯罪行為について解説していきます。
※ただし、ここでは刑法上の違法行為に限定していますので、より詳しくは法律の専門家に聞きましょう。
以下の知識は、今回のケースに限らず悪質な訪問販売や飛び込み営業・押し売り営業に対しても役に立ちますので、是非ともご一読ください。
(むしろ、ちゃちな町内看板詐欺レベルを遥かに超えた犯罪ばかりで、何だか大袈裟に感じるかもしれませんね)
それでは、どうぞ!
住居侵入罪・建造物侵入罪(刑法第130条前段)
こちらの許可なく室内へ入って来た場合は、住居侵入罪・もしくは建造物侵入罪にあたります。
いわゆる「不法侵入」による罪ですね。
不法侵入って正式な罪名
じゃなかったんだ…。
個人の住居やアパート・マンションといった共同住宅への不法侵入は「住居侵入罪」、店舗や公共建造物への不法侵入は「建造物侵入罪」というらしいので、学習塾への不法侵入は後者に該当するでしょう。
ただ、仮にも学習塾はサービス業を営む店舗。
たとえ勝手に教室内へ上がり込もうとしても、こちらに拒否する姿勢が見られなければ罪に問われないかもしれません。
ですので、訪問販売系の怪しい営業が来た際には、入室を許可しないという意思は明確に示しておきましょう。
むしろ、怪しくなくても
営業系は断固入室拒否
っていうスタンスの方が
いいですよ。
住居侵入罪・建造物侵入罪による刑事罰は、3年以下の懲役または10万円以下の罰金です。
今回の町内看板詐欺に関しては、余程の事がない限り室内まで入って来ることはないでしょうが、知っておいて損はないと思います。
(悪質な訪問販売の中には、簡単に帰らせられないように室内へ入ろうとするものもあるらしいですからね)
不退去罪(刑法第130条後段)
たとえ室内に入って来ようとする気配がなくとも、油断は禁物です。
相手によっては、満足のいく返事が聞けるまで玄関先に居座ろうとするかもしれません。
そこで知っておきたいのが不退去罪。
前述の不法侵入と比べる
と少し認知度が低いかも
しれません。
不退去罪とは、こちらが立ち退きを要求しても帰らなかった場合に成立する犯罪です。
要するに「帰れ!」と言っても帰らなかったことに対する罪ですね。
刑事罰は、建造物侵入罪と同じく3年以下の懲役、または10万円以下の罰金となっています。
要求の回数については規定が無いようなので、1回でも「帰れ!」と言って帰らなかったら犯罪として成立し得るとのこと。
ただし、不退去罪を狙って退居の要求をする際には相手にハッキリと伝えましょう。
そこら辺の注意点は
不法侵入と同じですね。
波風を立てたくないというのも分かりますが、あまり遠回しで曖昧な言い方では要求と受け取られない可能性もあります。
また、退去を要求したら直ちに不退去罪が成立するわけではありません。
荷物をまとめるなど、相手が退去するのに妥当な時間の経過をもって、はじめて不退去罪が成立します。
つまり
「帰れ! ハイ帰りませんでした~、不退去罪☆」
なんていう子ども理論は流石に通用しないということです。
それどころか、ムリヤリ現行犯逮捕を狙うと逆に「逮捕罪」という容疑にかけられるリスクさえあります。
あっぶねぇ~、
やろうと思ってた…。
なので、帰ってもらいたいと思った時の対応としては
①ハッキリと退去の要求をする
②不退去罪で警察を呼ぶ旨を伝える
③それでも退去しなければ通報する
というように、しっかりと順序を踏むよう気を付けましょう。
脅迫罪(刑法第222条)
他人を脅迫、つまり恐がらせたら成立する罪ですね。
(刑事罰は2年以下の懲役、または30万円以下の罰金です)
ただ、恐がらせる内容に指定があって
・生命
・身体
・自由
・名誉
・財産
以上のいずれかに関係したことでなければ、残念ながら?脅迫罪にはなりません。
生命に関わる脅迫とは、例えば
「ぶっ●すぞ」
というシンプルにド直球な脅しですが、流石に町内看板詐欺レベルの小悪党が言うことは滅多にないでしょう。
もしそんなヤベー奴が
現れたら、素直に警察
呼びましょうね。
身体に関わる脅迫だと
「痛い目を見るぞ」
っていう風な、生命の危機という程ではありませんが、少なからず肉体的にダメージを与える系の発言です。
これも相当ヤバい奴ですね。
自由に関わる脅迫は
「帰れると思うなよ」
みたいな、監禁して自由を奪うぞって内容になります。
会社と相手にもよりますが、ネットの被害報告を見るに、大体この辺から僅かに可能性が出てくる感じですね。
まだまだヤバい奴
ですけど。
名誉に関する脅迫については
「ネットの口コミに悪評を書くぞ」
という、お店の信頼や評判に影響するような、個人経営者にとって非常に痛いところを突いてくる内容です。
また、特に町内看板詐欺では
「掲載の協力をしないと、町内での居場所がなくなるぞ」
みたいなことを言ってくるかもしれませんが、これも名誉に関する脅迫と見なせるでしょう。
ほのめかす程度で、
ストレートに言って
くることは殆どない
とは思いますけどね。
最後の財産に関する脅迫は
「この店をメチャクチャにするぞ」
というような、金銭に限らず不動産などの所有財産も含めた脅しが該当します。
以上、ここまで脅迫罪にあたる5つのパターンを見てきましたが、お察しの通り町内看板詐欺レベルの押し売りで言われることは稀でしょう。
実際、僕のところに来た相手も物腰は柔らかく、そこまで強い言葉を使ってくることはありませんでした。
ただ、ネットでの被害報告の中には結構なプレッシャーをかけてくる輩もいたようなので、こういったケースも知っておくに越したことはありません。
他の悪質な訪問販売
に対しても役に立つ
知識ですからね。
強要罪(刑法第223条)
脅迫や暴行によって、相手に義務のないことを強制することで成立する罪です。
先程の脅迫罪や暴行罪との違いは、脅したり暴行することに加えて、それによって何らかの行為を強制的にさせるという点。
刑事罰は3年以下の懲役で、罰金刑は規定されていません。
(お金で解決できる余地が全く無い分、一般的に前述までの罪よりも重いと言えます)
強要罪の方がより悪質
なので順当ですね。
ここまでくると誰の目から見ても犯罪ですし、たとえ強要罪という存在を知らなくても8割の人は警察を呼ぶでしょう。
(恐くて呼べないってのも分かりますけど)
ネットの被害報告でも、高々3,000円程度を騙し取る町内看板詐欺でここまでの蛮行に及ぶケースは見られませんでした。
それでも、あくまで可能性の話としては考えられますので、頭の片隅に置いといてもらえると幸いです。
威力業務妨害罪(刑法第234条)
こちらの自由を奪うような暴力、脅しまたは嫌がらせ等によって、他人の業務を妨害することで成立する罪ですね。
殴る蹴るといった物理的に直接ダメージを与える行為だけでなく、電話やメール・SNSによる脅しや嫌がらせといった精神的な迷惑行為も妨害の対象になります。
ただし、訪問販売や営業電話といった心身への危険性が低い行為の場合は、一度や二度の妨害では罪を問うのは難しいでしょう。
(過去に有罪判決が出た事例では、飲食店に対して3ヶ月間に約970回もの無言電話が行われたとのことで、そりゃあ威力による業務の妨害にもなりますよね)
一日平均10回の無言電話
って…逆に愛すら感じる
ような…(病み気味の)。
刑事罰は3年以下の懲役、または50万円以下の罰金です。
いわゆる「営業妨害」の一種で、こちらの言葉の方が馴染みのあるという人も多いのではないかと思います。
先に述べた通り、余程の心身的ダメージを与えるような妨害でなければ、すぐに営業妨害とみなすことは出来ないでしょう。
町内看板詐欺レベルの訪問販売では、それほど心配することはないかもしれません。
ですが、大衆を相手に店を構えて営業をしていると、何がキッカケで営業の妨げが生じるか分かりません。
前述の強要罪と同様に、とりあえず知っておくだけ知っておいて、もしもの時のために備えておいて下さい。
知識があるのと無いのと
では、対処の仕方が全然
違ってきますからね。
詐欺罪(刑法第246条)
皆さんご存じ、金品を奪う目的で嘘をついて相手を騙す行為。
そう、詐欺です。
そんな詐欺による罪、詐欺罪の刑事罰は10年以下の懲役で、罰金刑は規定されていません。
(罰金刑がないので結構な重罪にも見えますが、被害額の程度や初犯かどうかで執行猶予がついたり懲役期間が変わりますので、一概に重い罪とは言えないようですね)
詐欺罪による懲役期間の
平均は1~8年程だとか。
実は当記事のテーマである「町内看板詐欺」、正確には詐欺ではありません。
というのも、地図看板を作るのも店舗名を掲載するのも、一応は有言実行しており嘘は言ってないから。
(看板のクオリティーは小中学生の工作レベルですけど)
なので、たとえ自分では内心払いたくないと思っていた標識掲載料だったとしても、事前の話通りに看板の作成・掲載を行っていたのなら詐欺罪にはならないでしょう。
言うなれば、ただの悪徳な飛び込み営業・押し売り営業の一種です。
それでも、ムカつくこと
には変わりませんけど。
しかし、お店に来た相手が話した内容によっては、くだんの「町内看板詐欺」であっても詐欺罪が成立する場合もあります。
それは、さも周囲の店は皆さん払ってます感を出すための演出として、相手の口からポロッと出る言葉次第です。
例えば
「商店街との協賛で作ったんで、掲載料お願いしますね」
「同じ町内の方々、皆さんから協力いただいてますから」
どことなく町内会費の一部のようにも聞こえる発言に、何だか抗ってはいけない同調圧力をヒシヒシと感じさせますね。
あぁ~嫌いだわー
そういう空気。
でも、コレ嘘ですから。
こういった業者に、商店街や町内会との繋がりは一切ありません。
他の店も協力してるというのも、確かに一部の店は(半ば騙されて)支払っているでしょうけど、決して全部の店ってわけじゃないんです。
1年後の契約更新をせずに支払いが滞った店舗の名前についても、契約を継続しているかのように見せるために、あえて消さずに残してある場合があります。
(実際、僕は2年目に更新を断ったんですが、後日に看板を見に行ったらフツーに自塾の名前が残ってました)
な、なんと小癪な…!?
このように、相手が標識掲載料を手に入れようとアレコレ言ってくる中には、さりげなく嘘が混ざっているかもしれません。
ですが、相手が嘘を言っているかが分かる特殊能力を持っている人でない限り、本当か嘘かを見抜くことは困難です。
なので、こういった怪しい訪問販売系の連中が話をする時には、十中八九は嘘を織り交ぜてくると考えて常に警戒しておきましょう。
町内看板詐欺への対策
さて、会社から独立して個人事業主として生計を立てようと考えている皆さん。
町内看板詐欺、怖くなってきましたか?
まぁ上記のような犯罪をする町内看板詐欺は極々少数だとは思いますが、それでも悪質な訪問販売・押し売り営業に対して何の対策も知らない状態では、不安になるというのも当然でしょう。
犯罪を知るだけでは
自分の身は守れない
ですからね。
そこで、以下では私ゆうき塾長が2年目にして町内看板詐欺を撃退?した時の体験談と、悪徳な営業に対する一般的な対策について解説していきます。
実店舗を構えて何かしらの商売をする個人事業主の皆さんにとって、決して他人事ではないハズです。
ぜひ最後まで読むことで知識武装をして、平穏無事な自営業ライフを送って下さい。
ゆうき塾長の実体験(2年目)
——それは、忘れた頃にやって来た。
ガチャ。
「すみませーん」
突如として眼前に現れた男、そして彼が脇に抱える看板を見て、ちょうど昨年の今頃に謎の出費をした苦い記憶が呼び起こされる。
「あ…ハイ、何でしょうか?」
その男が何の用で来たのか、本当は聞かなくても分かっていた。
それでも、これから起こるであろうことを信じたくないばかりに、ついつい分からない振りをしてしまったのだ。
「商店街に掲示している町内看板の集金でーす」
来た……っ!!
やはり、来てしまった。
この一年間、あたかも無駄に支払った費用なんて何一つ無かったかのように、必死に目を背けていた事実が再び目の前に突き付けられた。
いやいや、落ち着け。
Be cool 俺!
昨年の俺とは違う。
大丈夫だ。
なぜなら、奴が出現した時の正しい対処法は、ネットで先人達から学んだのだから。
「スミマセンけど、もう今年からは掲載しなくて結構です」
「いやぁ~、商店街の皆さんにご協力いただいてますので…」
出た!常套句!
しかし、ここで怯んだら負けだ。
「でも、こちらから掲載をお願いしたわけじゃないですから」
「実は、もう看板は作ってしまったんですよぉ。来年以降は断っても結構ですので、今年までは支払ってもらえませんかね?」
……なんて?
もう作った!?
Why? なぜ??
先に作るって何? どゆこと?
頭おかしいんかコイツ!?
い、いや大丈夫、これもまだ想定内だ。
こっちの返答は変わらない。
「……それでも、やっぱりウチから頼んだわけじゃないんで。ここの店名のところを消しといてくれたら大丈夫ですから」
「いやぁ~、でもぉ~(うんたらかんたら)」
——あ、コレもうこのまま続けてもダメなやつだ。
こうなったら仕方ない、最終手段を使うしかないな。
「あ、分かりました。とりあえず、民事上のトラブルを避けるために、ここからの会話は録音させてもらいますね」
スマホの録音ポチッ。
「あぁ~、じゃあ、もういいです。こちらも事を大きくしたくはないんで…」
バタンッ。
…………か、
勝った…っ!!
とにかく絶対にお金を払わない!
お分かりいただけただろうか?
何よりも大事なことは一つ
とにかく絶対にお金を払わないこと。
自分以外にもスタッフが
いるのなら、全員で徹底
しておきましょう。
こちらから地図看板の作成・掲載を依頼したわけじゃないので、お金を支払う義務は一切ありません。
勿論、相手は我々を口先でまるめこもうと、何やかんやと必死に言ってくるでしょう。
「商店街の皆さん協力してくれてるから」
「もう看板は作ってしまったから」
こちらの良心に訴えかけてくるように。
ここで断ったら、あたかもこちらが悪いかのように。
ノーと言えない皆さん。
気持ちは分かりますよ。
でもそんなの関係ねぇ!
断固拒否すべし。
もしも、相手の口車に乗せられてしまいそうで不安だという方には、ここだけの秘策があります。
相手の言っていることは右の耳から左の耳へと聞き流し、こちらのターンになったら一言だけ、ただひたすらに発して下さい。
「だが断る」
↑元ネタを知らない方は
どうかお気になさらず。
(本日3回目)
断り続けるのは面倒だとか、情け容赦だとかは不要です。
何を言われても頑なに、まるで壊れた機械人形がごとく繰り返すだけでOK.
こちらの言葉が相手に通じないのなら、相手の言葉もこちらに通じないということを示しましょう。
録音&拒否で大体は解決
どれだけ断っても諦めてくれず、キャラになりきって台詞を連呼するのにも飽きてきたら、もう一つの作戦を決行するタイミングです。
それは録音。
ボイスレコーダーを持っていないという人でも、スマホがあれば何の問題もありません。
iPhoneには「ボイスメモ」という録音アプリが標準搭載されていますし、Androidユーザーの方は「Google Play ストア」から無料の録音アプリをインストールできます。
(色んな録音アプリがありますが、悪徳訪問販売への対策で使用するなら音質はどうでもいいので、適当にインスピレーションで選べばいいですよ)
僕は今回の件で初めて
「ボイスメモ」アプリ
を使いました。
先ほど挙げた体験談の通り、僕の場合は効果絶大。
それまでは異様なほど食い下がってきたのに、録音を始めるや否や秒で引き下がっていきました。
(何かしら後ろ暗いことを喋っている自覚はあったんですね)
録音することで
「俺(私)、法的リテラシー高いっすよ」
というアピールになりますので、向こうも下手なことは出来ないわけです。
それに、もしも前述した詐欺罪(または詐欺未遂罪)や不退去罪といった犯罪行為が本当に起こった場合、録音したデータは重要な証拠にもなります。
ナルホドね。ちなみに、
録音ってこっそりしても
大丈夫なもんなの?
基本的には問題無いです
けど、録音する前に一言
伝えた方がイイですよ。
仮に無許可で録音したとしても、法に触れるようなことはありません。
無許可での録音には「盗聴」と「秘密録音」の2種類があります。
盗聴というのは、その場の会話に参加していない人が録音をすること。
町内看板詐欺のケースだと、相手との会話は成立していないこともありますが、少なくとも会話に参加はしているハズです。
ですので、こっそり懐にボイスレコーダーを忍ばせて録音したとすると、盗聴したということになるでしょう。
意外にも盗聴という行為自体は犯罪ではないので、このことによって違法となる心配はありません。
「盗む」って字が
ついてるから犯罪
なのかと思うのも
無理ないですよね。
そして、秘密録音というのは会話の参加者が録音すること。
秘密録音の方も、やったからといって別に犯罪になるというわけではありません。
よって、基本的に録音すること自体に刑法上の問題はないでしょう。
ただし、うっかり盗聴した内容をSNSやブログなどで不特定多数に公開したとなると、それは盗聴うんぬん関係なく犯罪です。
具体的には、刑法第230条の「名誉棄損罪」であったり、プライバシーの侵害による民法第709条の「不法行為による損害賠償」にあたる可能性があります。
故意はなく誤って録音データを漏えいしてしまった場合でも同様ですから、無用なトラブルを避けるためにも、録音する際には一言だけでも伝えておくのが良いでしょう。
まぁ録音するって言えば
余程の強者じゃない限り
さっさと退散すると思い
ますけどね。
商工会議所や役所・役場に電話する
僕の所に町内看板詐欺がやって来た時には、上記の2つを淡々と遂行することによって、見事に相手を撤退に追い込むことが出来ました。
しかし、もしかしたら運悪く戦闘力(?)の高い相手とエンカウントしてしまうことがあるかもしれない。
冒険(開業)序盤に超強敵
と遭遇する危険がある
糞ゲー、それが社会…!
頼みの綱である「だが断る」も録音も通じない相手が現れた時、どんな対策が考えられるのか?
そうなったら手段は一つ。
第三者にヘルプを求めましょう。
ですが、当然ながら援軍なら誰でもいいというわけではありません。
私達の身近にいて、この場を丸く収めてくれそうな救世主こそが求められます。
そんな頼れるメシア候補の一つは、皆さんが住む市町村の商工会・商工会議所や役所・役場です。
どんな田舎の町や村にも
必ずあります…よね?
これらの自治体・組織に電話をする素振りを見せるだけでも、相手に相当なプレッシャーを与えることができます。
それに、電話で事の詳細を話すなりヘルプを求めるなりすれば、解決の糸口を示してくれるかもしれません。
商工会・商工会議所であれば、相手が本当に商店街の協賛で来ているのかどうか分かるでしょう。
(まぁそんなことはないと思いますけど)
また、もしも相手が地域に無断で地図看板を設置していた場合、相手の業者にとって役所・役場に連絡されるのは非常に困るハズです。
というのも、そもそも屋外に地図看板を設置するには各都道府県市に届け出・登録が必要だから。
厳密には、設置する場所
の所有者(家主・地主)の
許可も必要ですけどね。
届け出・登録をせず街中に看板広告などを設置しているとなると、屋外広告物法(法律第189号)および都道府県市条例に違反することになります。
なので、無許可で看板を掲示している業者であれば、役所・役場に電話されて違反がバレるのは避けたいところでしょう。
(そうでなくとも、役所・役場に連絡されたら事が大きくなりますので、相手としてはフツーに嫌がるハズです)
ことさらに商店街との協力を強調していたり、地図看板を設置する場所が怪しいと感じたら、迷わず商工会や役場に電話すると良いですよ。
110番で警察に電話する
もう一つのメシア候補は警察です。
救世主というか
最終兵器
ですね。
天下の警察様を呼ぶとなったら、大抵の小悪党レベルなら裸足で逃げ出しますよ。
(靴を置いていかれても困りますけど)
ただし、気を付けていただきたいことが一つ。
警察は基本的に民事不介入だということ。
ミンジフカイニュウ?
要するに、刑法に触れない範囲で行われる個人間のトラブルに対しては、警察は一切関わることが出来ないということです。
よって、前述したような刑法に該当する行為が特に行われていない場合、たとえ110番通報をしても直接的な警察の助けは期待できません。
(相手への牽制にはなると思いますけど)
ただ、逆を言うと刑法に違反するような行為があった、すなわち刑事事件が起こったのなら即通報すべきでしょう。
「こんな小さな事で…?」と下手に遠慮したり躊躇ったりしていると、こちらに大きな被害が生じる危険性もあります。
そんな時のための
警察ですからね。
また、もし通報せず被害に遭った後で交番・警察署へ被害届を出しても、被害額が少額という理由で受理されない可能性があるようです。
(本来は警察の規範的に受理しないといけないみたいなんですけど…まぁ警察も忙しいですから)
やたらめったら110番をチラつかせるのは品が無いですが、犯罪の匂いがしてヤバいと感じたら、ためらわず即通報しちゃいましょう。
最後に
というわけで、いかがでしたか?
僕が知り得る限りの「町内看板詐欺」の実態と対策、少しは皆さんにも伝わったでしょうか?
ちょっとエンタメ要素を入れて書いたところもあるため、ひょっとしたらフィクションだと思った方もいるかもしれませんね。
しかし、これは紛れもないリアル、現実です。
まだ個人事業主として事業を起ち上げてから日が浅い人達の中には、不運にも既に体験したという人もいるでしょう。
実際、やつらは新規に
開店した事業を狙って
やってきますからね。
最後に一つアドバイスしておくと、万が一お金を払ってしまった場合には、一週間以内に領収書に記載された連絡先に電話して返金を求めて下さい。
被害に遭った後でも、案外あっさりと返金してもらえたというケースもあります。
(向こうとしても、あまりゴネられても困るんでしょうね)
また、民法や都道府県・市町村の条例に従って、契約を無効にできる可能性もゼロではありません。
ただ、やはり最善なのは契約しないこと、その場の勢いに負けて標識掲載料を支払ってしまわないことでしょう。
仕方なく泣き寝入り
してしまう人が多い
のが現状ですから…。
なにも、この記事で書いた内容を完璧に覚えておかなくても大丈夫です。
「そういえば、こんなのあったなぁ」
という、解決の糸口となる知識を持っていることが重要になります。
願わくば、読者の皆さんが自らの知識と意志を持って、悪の敵に打ち勝たんことを。
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