近い将来、もしくは現在進行形で学習塾をお探し中という保護者の皆さん。
可愛い我が子を通わせるのに相応しい塾かどうか、何を持って判断しますか?
また、学習塾講師の皆さんは
「ここの塾、うちの子に合うでしょうか?」
そんなことを聞かれたら、一体どのような返答をするのが良いものか、自身の中に解答をお持ちでしょうか?
おそらく殆どの学習塾では、もし上記のような質問をされたら真っ先にこう答えるでしょう。
「とりあえず、一度体験されてみては如何ですか?」
(・`ω´・)キリッ!
……決め顔は冗談ですが、返答内容としては至極真っ当というか、まぁそうだよねーと納得される講師の方が多いと思います。
今や大体の塾では、新規顧客に対して少なくとも1回は無料で体験授業を実施していることは、テレビCMやチラシ等で既に周知の通りです。
僕の塾もそうですね。
実際に子供が授業を体験してみないことには、その塾が本当に合っているのかを十分に判断することはできません。
塾探しにおいて、体験授業を受けるというのはマストな方法と言えるでしょう。
というか、シンプルに考えて
別に体験して損は無いんだから体験すればいいじゃん
って感じです。
(有料だとか体験後の勧誘がしつこいとか、何かしら問題がありそうなら一考の余地はありますが…)
有料は置いといて、
勧誘がしつこいのは
正直ヤバい
気がしますけど…。
さて、子どもが体験するのは良いとして、では保護者に何かできることはないのでしょうか?
そこで思いつくのが
授業見学
です。
そりゃあね、可愛い我が子がどんな授業を受けるのか、気になるのは当然だと思います。
しかし!
世に存在する大半の学習塾講師が密かに思っていることを、僭越ながら私ゆうき塾長が代弁させていただくと――
見学して欲しくない…っ!
え、なにそれ!?
見られたら困るような
授業してるってこと?
あ、怪しい…。
まぁそう思われても
仕方ないですが…。
はじめに断っておきますが、なにも学習塾側は自らの授業に自信が無いわけでも、ましてや保護者に内緒で後ろめたい事をしているわけでもありません。
授業見学されるのを嫌がるのは、単純に保護者が見学をすることに少なからずデメリットがあるからです。
というわけで、今回の記事では
塾が保護者の授業見学を敬遠する理由
について現役の学習塾経営者である私ゆうき塾長が解説していきます。
また、実際に塾を経営する中で保護者が授業見学を希望された場合に、どのような対応ができるかについても合わせて載せました。
保護者の皆さんや塾講師の皆さんにとって、知っておいて損ではない情報となっておりますので、どうぞご一読くださいませ。
その他の方も是非!
保護者による塾の授業見学がNGな理由
先程の話にもあった通り、保護者の授業見学をNGとすることにはデメリットもあります。
お察しの通りかと思いますが、普通に考えたら誰だって思いますよね。
怪しいと。
そりゃ僕だって保護者
の立場だったら怪しい
と思いますよ。
数ある学習塾の中で、自分の塾を選んで問い合わせ→体験授業を申し込んでいただいた時の喜びは、塾経営者ならば誰もが感じたことがあるでしょう。
控えめに言って最高です。
そんな大切な顧客が、我が子の行く先を案じて授業見学を希望されたのに対して一言
「あっ、授業見学はちょっと…」
もうこれ第一印象最悪。
不信感しかありません。
そこまでじゃなくても、
少しくらいは邪推して
しまいますよね。
折角の顧客へ早々に不信感を植え付ける、そんな度し難い行為をせざるを得ないのには理由があります。
それでも授業を見学されることのデメリットの方が大きいから。
では、以下に保護者の授業見学を推奨できない理由を見ていきましょう↓
普段通りの授業ができなくなる
教室に保護者がいるという普段と異なる状態になると、同じ教室で授業を受けている生徒達、そして授業をする講師もまた普段と異なる状態になります。
そんな状況下で陥るデメリットとして、以下の2つが考えられるでしょう↓
①生徒達は緊張したり落ち着かなくなったりして、勉強に対する集中力が低下する。
②講師達は授業におけるパフォーマンスが一部制限され、指導の質が低下する。
いやいや、これは流石に
大袈裟過ぎでしょ。
では、皆さんが小中学生の頃を思い出していただけたら、わりと納得できるのではないでしょうか。
保護者による授業参観
学校内外の先生が集まる研究授業
教室に漂う普段の授業とは違う雰囲気に、誰もが緊張したり、ソワソワした気持ちになったことでしょう。
なんとか平常を装って勉強する中、気になってチラッと周囲に視線をやると、目に映るのは自分達を見る大勢の大人達の姿。
明らかに異常。
どう考えても通常とは異質の空間であり、特別な学習環境です。
こんなのもう勉強だけに集中しろという方がムリな話でしょ。
別に授業参観や研究授業
をディスってるわけじゃ
ないですよ、マジで。
ただ、子ども達全員が普段と同じ集中力で授業に臨めるかというと、それは無いと断言できます。
だって気になるもん。
それでも、国公立の小中学校であれば授業料無償で授業が行われているだけに、集中できないからといって不平不満を言うのは少々お門違いというものです。
(それに、授業参観も研究授業もそれぞれ意義のあることには違いありませんし)
ですが、こと学習塾においてはどうでしょうか。
殆どの学習塾は、月々の授業回数が決まっている月謝制だと思います。
年間一括払いという塾も
なくはないですけどね。
毎月いただく金額が一定であるということは、毎回の授業に一定の品質を保証してこそ成り立つ仕組みです。
それだけに、塾講師は一回一回の授業を大切にして、責任を持って指導すべきでしょう。
(講師の役割や指導方法については、塾の指導形態にもよりますので一概には言えませんが、いずれにせよ授業の品質を下げて良い理由にはなりません)
にも関わらず、授業の透明性を重視するあまり、保護者の授業見学を是とした結果どうなるか。
生徒の勉強に対する集中力が低下するのは先述の通りです。
それだけでなく、講師達の授業パフォーマンスも少なからず低下するでしょう。
えっ、何で??
別に保護者がいても
普段通り授業できる
んじゃないの?
そう出来る人もいるの
かもしれませんけど、
でも至難の業ですね。
授業参観や研究授業で授業を担当している先生を見て下さい。
普通に緊張してますよ。
いや、そりゃあ見た目じゃ平静を装っているでしょうけど、内心かなりドッキドキの筈です。
歴の浅い講師なら尚更で、心臓なんてサブマシンガン並みの速度で鼓動を打っていることでしょう。
(僕も授業見学された日にはハツカネズミ並みに鼓動が速くなるので、人のことは言えませんけど…)
そんな緊張した状態で普段通りの授業とか、ハッキリ言って無理ゲーです。
「それは教える自信が無いからだ」
「指導が未熟だから緊張するんだ」
って言われたら、確かに否定はできません。
実際、僕なんてまだまだ
ですし、自己肯定感も
メチャクチャ低いです。
しかし、じゃあベテランの講師なら普段通りのパフォーマンスを発揮できるのかというと、ところがドッコイそうでもないのです。
保護者に見られている・聞かれているとなると、どうしても目の前の子供だけでなく、後ろに控える大人の反応にも意識が向いてしまいます。
すると、講師は無意識にお行儀良く振る舞おうとするというか、つい当たり障りのない言動をとってしまうんですよ。
例えば、普段は生徒とフレンドリーに接しているような講師でも、改まった大人の対応になるということです。
授業はじめの雑談が短くなったり、砕けた表現を避けて堅い言い回しになることもあるでしょう。
大事なんですけどね、
授業前の雑談。でも
「早く授業しろよ」
って思われそうで…。
そういったことが悪いというわけではないのですが、講師それぞれの持つキャラクター性が弱まり、生徒とのコミュニケーションや指導面で悪影響を与えかねないというのもまた事実。
体験授業を通して、塾講師の素のキャラクターを子どもに感じてもらいたいのなら、保護者が授業見学をするのは控えた方が良いと思われます。
生徒の座席数が減る
これは規模の小さい個人塾に限った話かもしれませんが、生徒用の席が減るというのも結構なデメリットです。
個人塾を経営できる賃貸物件は意外と限られていて、加えて資金面の縛りも大きいため、立地は良くても教室が狭いということも多々あります。
(それこそ、アパートの一室レベルの狭さとかですね)
立地や機能面、物件の種類などをガン無視して床面積に全振りしない限り、教室の数や広さなんて高が知れているでしょう。
ですので、時期や曜日・時間帯にもよりますが、生徒だけで教室がいっぱいになることは決して珍しくありません。
(全く流行っていない塾なら心配ないでしょうけど)
まぁそれはそれで
違う心配が必要
ですけどね…。
保護者も生徒も顧客であることには変わりありませんが、実際に入塾して授業を受けるのは生徒のみ。
生徒の座席を減らしてまで保護者の方に授業見学を許可することに、少なからず抵抗を感じるというのは仕方の無いことでしょう。
生徒と関わる時間が減る
これも、受付スタッフがいるような大手塾には無用な心配かもしれませんが、個人塾にとっては無視できない問題です。
授業の前後、保護者が入退室する時には、授業を行う講師自らが応対することになるでしょう。
なにも車の前まで行ってお出迎え・お見送りまでしなくとも、最低限の挨拶や教室の案内、授業見学の説明などは絶対に必要ですよね。
となると、それだけ生徒と関わる時間は減ってしまいます。
授業前後の休憩時間は、個々の生徒と話せる唯一にして貴重な時間です。
(個別指導や自立型個別指導であれば、多少は授業中でもコミュニケーションとれるかもしれませんけど)
それにしても、授業中
には出来ない話もあり
ますからねぇ。
あ、いや、なにも保護者とのコミュニケーションが不要って言いたいわけじゃないですよ。
ただ、保護者との関わりについては、別に授業前後のタイミングである必要性はありません。
生徒のいない授業時間外に面談することだってできますし、対面じゃなくてもいいならLINEアプリを使っていつでもコミュニケートし放題です。
一期一会って言うと大げさかもしれませんが、講師は一回一回の授業に責任を負っているのと同時に、一回一回の生徒との関わりも常に大事にしています。
保護者の授業見学をOKする場合には、こういったデメリットを十分に考慮しておくべきでしょう。
授業見学を希望する保護者への対応
さて、それではもし授業見学を希望される保護者の方がいたら、どういった対応をとるのが良いのでしょうか?
上記のデメリットを全て理解した上で、それでも授業見学を受け入れるという選択をするのも否定はしません。
実際、授業見学OK
という塾もあります
からね。
ですが、授業見学にリスクを感じている塾経営者の方も相当数いるかと思います。
そんな時に
「あ、いや、うちは授業見学NGなんで」
と拒否するだけでは誠意が感じられません。
というか、単純に不快です。
(まぁ流石にこんな雑な断り方をする塾はないでしょうけど)
せめて、もっと申し訳
なさそうに、丁重~に
お断りしますよね。
一方で、断った上で授業見学に代わる何らかの提案をすることが出来れば、保護者の方に不信感・不快感を与えてしまうのを防げるかもしれない。
以下では、そんな授業見学の代替案を3つ挙げていきますので、順番に見ていきましょう。
それでは、どうぞ!
授業の様子を動画にして見せる
リアルタイムではないものの、実際の授業風景を見れるのは良いですね。
というか、余程の古い映像じゃない限りリアルタイムで見る意味って特になくないですか?
(流石に10年以上前のものとかになると信憑性が薄いでしょうけど)
むしろ、一時停止や巻き戻しができる分、授業の流れや指導の特徴をじっくりと説明できて非常に便利です。
自分が写っている授業を
見せる・見るというのは
少々気恥ずかしい感じも
しますけどね。
授業見学の代替案という目的とはズレますが、自塾の授業を客観的に見ることで改善点を発見できるかもしれませんので、そういった意味でもオススメです。
ただし、授業動画を撮影し保護者の方に見せる際には、一つ注意すべきことがあります。
それは
映っている生徒・講師の許可を得ること。
日本国憲法第13条には「個人の尊重」についての人権が明記されていることを、中学3年生の社会の授業で習ったのを覚えているでしょうか。
僕は正直うろ覚え
ですけどね。
勝手に撮影して第三者に写真や映像を見せるという行為は、この第13条で定められた個人の尊重に反するとして、プライバシー権・肖像権の侵害にあたる恐れがあります。
つまり、極端に言うと
犯罪です。
ぶっちゃけ、実際に逮捕されたり賠償金を請求されたりする可能性は低いとは思いますが、そういう問題じゃありません。
無断で撮られて・見られて不快に感じる人もいるんです。
他人が嫌がることをしない、小学生でも当たり前に理解しています。
人権侵害ダメ、絶対!
なので、撮影をする際には必ず生徒・講師に事前説明を行い、授業見学を希望される方に授業の動画を見せても良いという許可をとりましょう。
授業時間外に教室見学をしてもらう
生徒がいる時間に授業を見学するのは難しいので、生徒がいない時間に教室だけでも見学してもらおうということです。
生の授業を見たいという保護者の方からすると、少し物足りないように感じる代案だとは思います。
それでも、ただ授業見学を拒否するだけよりかは幾分マシですし、生徒や講師の双方に迷惑がかからないので最も無難な方法と言えるでしょう。
僕は好きですよ、無難。
保護者にとっても、決してメリットの無い話ではありません。
ゆっくりと落ち着いて講師の説明を聞くことができ、かつ疑問に感じたことはすぐに質問もできるのは、生徒のいない授業時間外だからこそです。
ついでに面談をしてもらって、子どもの学習や教育の悩みを聞いてもらうこともできます。
授業見学とは趣旨が少しばかり異なりますが、授業を見るのとはまた違った良さがありますので、代替案として勧めるのも十分アリでしょう。
(ただ、生徒のいない授業時間外の対応となる為、必然的に講師自身の自由な時間や授業準備の時間が削られることになりますけど…)
でもまぁそのくらい、
独立開業した一人塾長
には全然大したこと
ないですよね☆
特別授業のイベントを設ける
通常の授業とは異なる日程で、月謝とは別費用で授業イベントを設ける方法です。
開催日は、多くの保護者が仕事休みである土日、または祝日に設定します。
「定期テスト対策」
「模試の復習講座」
「受験の心構え指導」
授業の目的や内容は色々と考えられますが、事前に告知する案内には注意書きとして「保護者の授業見学OK」の旨を記載しておきましょう。
(それか、いっそのこと生徒が相手ではなく、保護者を対象とした体験授業とするのも良いですね)
それはそれで普段とは
違った雰囲気の授業に
なりますけど。
勿論、特別に開講するイベントとしての授業ですので、保護者が本当に見たい普段の授業とは異なる部分も多々あるでしょう。
イベント用の授業準備や出勤日程が加わる為、講師側の負担も増えるかもしれません。
しかし、上手く運営できれば保護者からの信頼を得ることになるだけでなく、塾のイメージアップや集客にも繋がります。
要望に応じて随時できるような対応ではありませんが、時に選択肢の一つとして検討の余地はあるのではないでしょうか。
最後に
というわけで、いかがでしたか?
学習塾において、保護者が授業見学することには生徒・講師それぞれにとって幾つものデメリットが存在します。
授業見学の是非については、授業スタイルや塾周辺の地域性にも依りますので、どっちが良いか一概には決められません。
当記事の内容は、
あくまで参考程度に
受け取って下さい。
保護者に不信感を与えないよう見学を受け入れるか、それとも代替案を提示・提供することで、生徒には普段通り安心・集中して授業を受けてもらうか。
塾経営者がデメリットをしっかりと把握して、塾の現状を鑑みた上で決めることが大事です。
当記事の内容が、授業見学について悩みを抱えている塾関係者や保護者の皆さんの助けとなれば幸いです。
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