2021年3月15日、石川県奥能登地方の某田舎町で個人塾を開業しました。
「少子高齢化が進む過疎地域で学習塾なんて無謀じゃないか?」
マーケティングを学んだ専門家は勿論、経営初心者でも抱く疑問でしょう。
開業した僕自身も
そう思ってました。
「どのくらいの生徒数になるか?」
「年収は一体いくら位になるか?」
これから独立して田舎で学習塾を開業しようと考えている人にとって、最も関心の高いところだと思います。
開業して一年が経った今、僕という一個人の例に過ぎないものの、それらの疑問に対する一つの解答を得ました。
この記事では、私ゆうき塾長が個人塾経営を始めて一年が経ったことを記念して、生徒数や年収・利益など各種数値を一挙公開していきます。
月別・学年別生徒数の推移
月別の売上と年収・利益
そういった記録を余すことなく赤裸々に報告していく次第です。
まぁ別に減るもんじゃ
ないですからね。
むしろブログ記事にも
なって万々歳です。
学習塾経営を志す皆さんは、ご自身の開業の参考にして下さい。
それ以外の方々も、田舎の個人塾経営のリアルをご覧いただき、ぜひ他人事として楽しんでいただけたら幸いです。
田舎個人塾の年間生徒数の推移と内訳
ということで、まずはこの一年間における生徒数の推移を見ていきましょう。
以前の損益分岐点を超えた際に書いた記事では10月まで、およそ8ヶ月分の記録でしたが、今回は12ヶ月分の完全版です。
(途中報告と損益分岐点についての解説はコチラ↓の記事ですので、よろしければ是非ご覧ください☆)
その後の11月以降、さらに生徒数が増加するという嬉しい事態となりました。
生徒・保護者の皆様、
ありがとうございます!
過疎化が進む田舎町での個人塾経営1年目、ぶっちゃけ生徒数はどんなもんなのか?
あくまで僕個人の結果ではありますが、これから学習塾を開業する方の参考になるかと思いますので、ぜひ興味半分くらいでご覧ください。
それでは、どうぞ!
田舎個人塾の年間生徒数の月別推移
この一年間における月別の生徒数は以下の通りです↓
年・月 | 生徒数 |
2021年 3月 | 0名 |
4月 | 2名 |
5月 | 2名 |
6月 | 2名 |
7月 | 4名 |
8月&夏講 | 4名 |
9月 | 10名 |
10月 | 12名 |
11月 | 14名 |
12月&冬講 | 15名 |
2022年 1月 | 22名 |
2月 | 23名 |
いやぁ~、いつ見ても
最初の半年がヤバい。
まぁ開業し立ての個人塾なんて知名度も実績も皆無ですから、ある程度は仕方ない部分もあるかと思いますが、この期間は相当メンタル削られましたね。
田舎で個人塾を始める予定の方は、開業後の数ヶ月間くらいは「教室に自分一人だけ」という光景が当たり前になりますので、結構な孤独耐性が求められるでしょう。
ぼっちに慣れていて
良かったぁ☆
それでも、夏の講習会明けの9月には生徒数が2桁に、翌月の10月には無事に損益分岐点を超えました。
さらに、冬の講習会でも新規の申し込みが増え、1月には生徒数20名を突破。
この推移を見て、長期休暇における講習会の需要がいかに高いか、改めて実感する次第です。
(そういえば、以前に勤めていた大手塾でも講習会の集客にはメチャクチャ力を入れてましたね)
とりあえず、ここまで無事に右肩上がりで生徒数を増やすことが出来ています。
これも塾生・保護者の
方々のお蔭です。
田舎個人塾の学年別生徒数の推移
それでは続きまして、この一年間における月別の学年別生徒数は以下の通りです↓
年・月 | 学年別生徒数 |
2021年 3月 | 0名 |
4月 | 【小5】1名 【中3】1名 |
5月 | 【小5】1名 【中3】1名 |
6月 | 【小5】1名 【中3】1名 |
7月 | 【小5】1名 【中3】3名 |
8月&夏講 | 【小5】1名 【中3】3名 |
9月 | 【小4】1名 【小5】1名 【中1】1名 【中3】7名 |
10月 | 【小4】1名 【小5】1名 【中1】1名 【中3】9名 |
11月 | 【小4】1名 【小5】1名 【中1】2名 【中3】10名 |
12月&冬講 | 【小4】1名 【小5】1名 【中1】2名 【中3】11名 |
2022年 1月 | 【小4】1名 【小5】1名 【中1】3名 【中3】17名 |
2月 | 【小4】1名 【小5】1名 【中1】4名 【中3】17名 |
あ~ハイハイ、いつ見ても
小学生が少ない。
そして
中学3年生が圧倒的に多い。
今年度で生徒数が一番多い2月なんか、23名中で中学3年生が17名、なんと7割以上ですよ。
しかも、現状では当塾において高校生の指導は行っておりません。
これが何を意味するか……想像に難くありませんが、想像したくないですね。
現実逃避中…。
ですが、嬉しい事に一部の現中学3年生およびその保護者様のご要望もあり、新年度からは数学限定で高校生も指導する予定です。
(ホームページには載せませんし、新規の募集はしないつもりですけど)
それでも、高校への通学距離や受講希望科目など諸々の関係上、全ての3年生が当塾を継続するわけではありません。
なんせ中学までとは環境が大きく変わりますので、継続しないという選択自体は決して否定すべきものではないと思います。
それに、規模の小さい個人塾では高校生相手に指導できる科目・レベルに限界がありますから、どうしても理系・文系スタッフが揃った大手塾の方が学習環境的に有利です。
一人で理系・文系両方
の高校内容を指導する
とかキツ過ぎでしょ。
とにかく、何が言いたいかというと
生徒の割合が受験学年に偏っていると、進学時の生徒数減少は殆ど避けられないということ。
(中学受験にしても、進学後は今までと環境が大きく変わりますので、継続できなくなることは十分に考えられます)
「田舎だから受験学年以外の需要が少ない」
と割り切って考えることもできますが、今より経営を良くするには自身の塾に原因があると考え、改善策を模索すべきでしょう。
ま、今のところ特に
何も良いアイデアが
思い浮かばないです
けどね…。
それに、受験を終えて生徒数が減るというのは、本来なんら悲観的になることではありません。
塾講師にとって、塾生達が無事に進学・就職して笑顔で卒塾してくれたら、それが一番嬉しいですから。
(※受験と関係なく退塾で生徒が減る場合は、全力で己の指導を振り返り猛省すべきですけど…)
田舎個人塾の年間売上・費用・利益
さて、続いては皆さんが最も関心が高いであろう売上・利益を公開していきましょう。
まぁ結局のところは
食っていけるかどうか
が最重要ですからね。
「お金目的」とかって言うと何だか教育にそぐわないイメージがあるかもしれませんが、学習塾はボランティアではなく営利を目的とした私企業(個人企業)です。
学校のように国・地方から予算が出ているわけでもないので、利益を追求するのは極自然なことと言えるでしょう。
勿論、子供達の教育に携わるということは何物にも代えがたい喜びですし、やりがい・責任・誇りといったものも感じています。
ですが、企業として採算が取れないのであれば、満足に経営を続けることも叶いません。
そんな経営と切っても切れない関係にある売上・利益について、開業を前に不安に感じるのも無理からぬことです。
僕もホン……ットに
不安でしたからね。
(今もですけど…)
ってなわけで
貴賤云々はナンセンス。
田舎個人塾のリアルな経営を、一つのエンタメとしてご覧いただけたら幸いです。
(僕と同じように田舎で塾開業を考える方にとっては、以下の内容は中々にショッキングですけどね…)
それでは、どうぞ!
田舎個人塾の月別売上と年収
まずは年間の売上、つまり年収を見ていきましょう。
令和3年分の確定申告が無事?に終わったので、今回は季節講習会や入塾金も含めた決算書通りの数値を公開していきます。
以前の記事で公開したのは月謝のみの売上でしたので、今回はよりリアルな売上を反映したものとなっているハズです。
でわでわ、田舎の個人塾が一年間で得た売上がコチラ↓
年・月 | 売上 |
2021年 3月 | 0円 |
4月 | 20,000円 |
5月 | 18,000円 |
6月 | 18,000円 |
7月 | 58,000円 |
8月&夏講 | 151,000円 |
9月 | 161,500円 |
10月 | 169,500円 |
11月 | 214,500円 |
12月 | 209,500円 |
2022年 1月&冬講 | 638,500円 |
2月 | 377,000円 |
※学年や受講コース、入塾金、講習会の受講回数といった幾つかの要素によって売上が変動するので、単純に生徒数と売上が比例してはいません。
以上より、開業月から12ヶ月間(1年間)の売上は
2035,500円
ただし、個人事業主の確定申告では1月1日~12月31日までの所得を計算・申告することとなっています。
なので、申告上の数字は3月~12月まで(10ヶ月間)の売上で
1020,000円
…って、1・2月の売上
を加えただけで2倍近く
も増えてる!?
ということは、言い換えると
1・2月だけで年収の半分を稼いだ
ってことですよね。
特に1月については、まさかの月収60万円超えという自分でも信じられない結果となっていました。
(まぁ1年トータルで見たら明らかに赤字ですし、1月の数値には講習会費用や入塾金も含んでいるので、他の塾長の皆さんと比べたらまだまだでしょうけど…)
これについて仕訳帳をもとに分析したところ、ザッと以下のような要因が挙げられます↓
受験を控える中学3年生が…
・新規で大勢入塾した→入塾金UP
・受講コースを増やした→授業料UP
・講習会を多く受講した→講習会費UP
つまるところ
中3がいっぱい来た
ってことですね。
また、8月にも売上が急増していることからも、季節講習会は生徒数だけでなく売上についても大きな契機の一つとなりそうです。
(モチロン、講習会の一番の目的は生徒達の学力向上ですけどね)
しかしながら、じゃあ上記の売上が丸々手元に残るのかというと、決してそんなことはありません。
これらの売上から、経営に使ったお金(経費)や各種控除を引いた金額が所得(課税所得)。
その所得をもとに計算された所得税・住民税を支払い、さらには年金や保険料を支払って、ようやく手元にお金が残るというわけです。
以下では、所得を計算する際に必要な経費について、固定費・変動費という視点で見ていきます。
田舎個人塾の固定費・変動費
実は、固定費・変動費については既に以前の記事で損益分岐点を計算するのに紹介しています。
ということで、ここでは前回以降で特に変わっていない費用については割愛して、何かしら変化があった費用だけ見ていきましょう。
(全ての詳細な内訳を知りたい方は、ぜひ過去記事をご覧ください)
まず、固定費については前回から変更はなく
109,000円
というか、固定費なんで
変更があったらおかしい
ですよね。
※確定申告においては、年金や保険料は費用ではなく控除になるのですが、ここでは毎月決まった額の支出ということで敢えて固定費に入れてあります。
また、住民税は費用にも控除にもなりませんが、ここでは毎月決まった額の支出ということで(以下略)
(実際の確定申告では費用に加えていませんので、その点どうかご了承ください)
だだ、だ、脱税なんか
してないんだからね!
(必死)
一方で、変動費については多少の変化がありました。
何かというと、冬になって暖房にかかる電気料金が増加したことです。
春に開校して秋に損益分岐点を超えたということで、それまでにかかっていた水道光熱費をもとに、以前の記事では概算で4,000円と設定していました。
ところが、暖房のフル稼働により月々の電気料金が急増。
12月~2月までの3ヶ月間での平均は
約8,500円
…うん、何ていうか、個人的に北陸のこういうトコが好きになれません。
(ちなみにガスは使っていませんし、水道は大家さんの寛大な御心により無料で使わせてもらっています)
大家さんが良い人で
有り難い限りです。
なので、水道光熱費は前回より上方修正して6,500円に設定。
他の変動費については概ね変化ありませんので、変動費の合計は
35,000円
固定費と合わせた費用の合計月額は
144,000円
田舎に住んでいて、これだけのお金が無条件に毎月ぶっ飛んでいくのは中々にショッキング…っ!
いやぁ~個人事業主って
大変ダナー(白目)
さ、さて、気を取り直して年間の費用を計算していきましょう。
開業月から12ヶ月間(1年間)の費用は
144,000×12
=1728,000円
また、確定申告を行った12月まで(10ヶ月間)の費用は
144,000×10
=1440,000円
費用だけで優に3桁万円…!
※3月~7月の消耗品費・水道光熱費・日用品費が(生徒が少なくて)見積もりよりも少額だったため、実際はもーちょい少なかったですけどね。
あとは先程の売上から、ここで計算した費用を引いて利益を出すんですが…。
利益…あるかなぁ…。
田舎個人塾の年間利益
さて、いよいよ年間利益の公開です。
ここまで調べてきた売上と費用から、利益は以下の式で求められます↓
(利益)=(売上)-(費用)
入ってきたお金から出ていったお金を引いた、手元に残るお金ということですね。
※この後、さらに各種控除を引いた課税所得をもとに所得税・住民税が計算されて支払われます。
ですので、正確には手元に残る金額はもう少し減るのですが、ややこしいので今は考えないことにしましょう。
どうせ赤字なんで。
それで、計算した結果どうなったか?
まずは、確定申告を行った12月まで(10ヶ月間)の利益がコチラ↓
【確定申告を行った12月までの利益】
1020,000-1440,000
=-420,000(円)
(実は、別途開業費用に80万円弱かかっているので、本当はもっと赤字が深刻なことに…)
……………。
で、でわ続いて、開業月から12ヶ月間(1年間)の利益がコチラ↓
【開業月から12ヶ月間(1年間)の利益】
2035,500-1728,000
=+307,500(円)
(これに雀の涙ほどの副業収入を合わせても、まだ開業費用を考えたら余裕で赤字ですね)
……………。
…ハイ、え~~っと、それじゃあ……
今日はこの辺で締めましょっか?
最後に
というわけで、いかがでしたか?
「過疎化が進む田舎で個人塾を開業」
何ともヤバい気配がプンプンするけど、実際のところはどうなのか?
ゆうて何とか食っていけるだけ稼げるのではないか?
石川県の奥能登地方で一年間、個人塾を経営した塾長兼ブログ管理人から、リアルの数値をご紹介させていただきました。
結果、まだまだ開業費用をペイするだけの利益は得られていないものの、生徒数・売上ともに多少は明るい兆しが見えているように思います。
これも、ひとえに生徒・保護者の皆様のご支援・ご声援あってこその結果です。
この場を借りて、改めて心から感謝申し上げます。
【追記】2023年2月
開業二周年を記念した、2年目の生徒数・売上・利益報告記事を作成しましたので、よろしければ併せてご覧ください。
【追記の追記】2024年4月
開業三周年を記念した、3年目の生徒数・売上・利益報告記事も作成しましたので、よろしければ併せてご覧ください。
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