学習塾で日々生徒達と接する講師の皆さん。
もしくは学校で先生をされている教員の皆さん。
生徒との接し方について、どの程度気を配っていますか?
僕は職業柄メチャクチャ
気を配ってるつもりです。
多くのビジネス本などで語られる重要な対人スキル「コミュニケーション能力」にも大きく関わる「他人との接し方」。
特に子ども相手となると、大人を相手にするよりも気を付けるべき事が多いです。
そこで、本記事では
「生徒・子供との接し方」
について、現役の学習塾経営者である私ゆうき塾長が知識と経験に基づいて解説していきます。
子供と接するのが苦手という人や、子供を相手にする仕事をされている人は是非ご参考にして下さい。
(本記事の続編にあたる「話し方」も是非ご覧くださいませ↓)
パーソナルスペースと最適な距離感
さて、まずは子供との最適な距離感について「パーソナルスペース」をもとに見ていきましょう。
ぱーそなるすぺーす?
という方は、他人との距離感を間違えて、知らず知らずの内に相手を不快な気持ちにさせてしまっているかもしれませんよ。
特に中学生くらいの子は
距離感に敏感ですからね。
それでは、どうぞ!
パーソナルスペースとは?
パーソナルスペースとは、直訳すると「個人的空間・間隔」で、主に以下の意味で用いられます↓
パーソナルスペース
心理的な安全地帯。言い換えると、
他人に近付かれると不快に感じる空間のこと。
これはアメリカの文化人類学者であるエドワード・T・ホール博士によって提唱されたもので、彼は対人距離を次の4つの範囲に分類しました。
「密接距離」(0~45cm)
家族や恋人など、メッチャ親しい人だけ許される距離。
それ以外の人には恐怖感・不快感を抱きやすい。
「個体距離」(45~120cm)
まぁまぁ親しい間柄の人までは許容される距離。
互いに表情が読み取れ、手を伸ばせば触れられる。
「社会距離」(120~360cm)
知らない相手やビジネスなど改まった場で話す距離。
細かな表情の変化が読めず、手が届かない。
「公衆距離」(360cm~)
講義や講演など、公衆に語りかける際の距離。
一人ひとりとの個人的な関係は極めて薄い。
上記の間隔は性別や年齢、文化などによって異なる傾向があり、個人差もかなり大きいです。
なので、相手の性格や様子、反応を見ずにこの考えをそのまま鵜呑みにするのは問題ですが、それでも相手との適切な距離感を知る目安にはなるでしょう。
先生と生徒との最適な距離感
当然ですが、先生と生徒との間柄は家族でも親友でも恋人なく、お互い完全に気を許すほど親しい関係というわけではありません。
親しくなり過ぎると友達感覚になってしまい、指導に強制力を持たせることが出来なくなり、教室の治安維持や学習指導が思うようにいかなくなる危険性が高まります。
生徒を従わせるって訳では
ないですが、それでも先生
による多少の統制・秩序は
必要ですからね。
ですが、だからといって生徒の細かな表情の変化や勉強の様子などを観察できないほど常に距離をとってしまっては、指導上の支障が生じるでしょう。
生徒と良い意味での信頼関係を築くことも難しく、生徒に質問したい事や相談事があっても先生に打ち明けられないといった事態にもなりかねません。
というわけで、上記パーソナルスペースと指導上の都合を考慮すると、生徒との適切な距離は
大体80cm~1m程度
(少し離れ気味の個体距離くらい)
だと判断できます。
手を伸ばしてもギリ
届かないなって距離
ですかね。
ただし、出会ってしばらくの間は打ち解けていないでしょうから、1.5m程の社会距離をとった方が良いでしょう。
スティンザー効果と最適な位置関係
以上、生徒・子供との距離感について話してきましたので、続いては位置関係についてです。
皆さんは生徒と話す時、正面・斜め前・横、どの位置から話しますか?
? いや、普通に正面から
でしょ。ダメなの?
まぁ別にダメってわけ
じゃないですけどね。
ですが、せっかく距離感を意識するのであれば、ついでに位置関係にも気を配ると生徒に与える印象がグッと良くなるかもしれませんよ。
ということで、ここからは生徒・子供と接する時の位置関係について見ていきましょう。
そこで手掛かりとなるのが
スティンザー効果
です。
なにそれ、兵器?
それは
スティンガーミサイル
だお(´・ω・`)
スティンザー効果とは?
スティンザー効果とは、アメリカの心理学者であるスティンザー氏が発見した以下3つの原則(スティンザーの三原則)に基づく心理的効果・現象のことです。
①正面に座る人は、反対意見を持つ人・過去に口論した人が多い。
②ある発言の後、次に発言する人は反対意見の場合が多い。
③議長の主導権が強い場合は隣同士で私語が多く、主導権が弱い場合は正面同士で私語が多い。
以上は主に会議の場における心理を表していますが、これらの原則は日常における他人との接し方にも応用できます。
特に①については、位置関係によって相手に与える心理効果や正面以外の位置についても研究がなされており、ビジネス本などでもよく紹介されている原則です。
具体的な内容は以下の通りとなっています↓
正面に位置する(対面法)
→相手に緊張感や圧迫感を与え、対立しやすい。
横に位置する(平衡法)
→物理的距離が近く親密感を与え、同調しやすい。
斜め前に位置する(90度法)
→中立的でストレスを与えず、親しくなりやすい。
では、このスティンザー効果を考慮した上で、生徒・子供と接する時の最適な位置関係を推測してみましょう。
先生と生徒との最適な位置関係
以上の心理効果を考えると、正面に位置するのは一対一で叱る時など一部の場面を除いて極力避けたいところですね。
特に引っ込み思案な子や
人見知りな子にとっては
プレッシャーかも…。
一見すると良さ気な横に位置するパターンですが、こちらはパーソナルスペースの関係上、生徒と適度な距離をとるのが難しいでしょう。
ですが、既に生徒と多少なりとも信頼関係が築けているのであれば、時には横で接するのも悪くありません。
例えば、分からない問題について質問された際に、一緒に考えながら小出しにヒントを与える場面。
こういった時には、横に並んで生徒と同じ目線で問題に向かうことで、同調し親近感を与えられます。
塾では頻繁にある場面
なので、多用し過ぎに
さえ気を付ければ結構
効果的ですよ。
そして、ちょっとした質疑応答や何気ない雑談、軽い面談・相談の際には斜め前に位置すると良いでしょう。
リラックスして自然に会話するための位置関係として、カウンセリングや各国首脳会談の席でも用いられています。
通塾して間もない生徒や
内気な子にも有効です。
とりあえず
位置関係に困ったら斜め前
を心掛けておくと間違いないですね。
最後に
というわけで、いかがでしたか?
生徒・子供との適切な距離感を掴む手掛かりとなったでしょうか。
とはいっても、上記の内容はどんな状況でも適応するような万能なものではありません。
その時の状況によっては、パーソナルスペースやスティンザー効果の意に沿わない場面もあるでしょう。
あくまで本記事は学習塾
で生徒と接する場合を想定
していますからね。
また、自分の塾がどんな指導形態なのかによっても状況が大きく変わってきます。
指導形態の特性上、集団指導では必然的に先生と生徒との距離が遠くなりがちですし、個別指導では逆に近くなりがちです。
(塾の指導形態についての詳細は以下の過去記事ご覧ください↓)
本記事の内容は、生徒と接する時には少なからず意識しておくと良いのは確かですが、自塾の特徴や生徒それぞれの感性に合わせて適切な距離感をその時々で考える必要があるでしょう。
読者の皆さんが、生徒・子供と程良い距離感で程良い関係を築けることを願っています。
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