これから学習塾を開業しようという皆さん。
念願の個人塾経営に不安と期待で胸を膨らませる前に、是非とも考えていただきたいことがあります。
それは何かというと
塾則
塾則とは、読んで字の通り「塾の規則・決まり」のことです。
えぇ~~!? そんな
規則とか堅苦しいし
無くてよくない?
いやぁ~それは甘い!
甘過ぎるっ!
確かに、言わんとすることは重々分かります。
規則の一切無い自由な塾の方が、何だか生徒達が伸び伸びと勉強できて、笑顔に溢れた楽しい教室って感じがしますよね。
逆に、厳しい規則を幾つも掲げている塾を見て、無味乾燥としたつまらない教室をイメージする人も少なくないでしょう。
(そもそも楽しい・つまらないが学習塾にとって重要かどうかって話ですが、それは今回の主旨とは違うので置いときます)
ただ、本当に規則の全く無い塾が効率良く勉強できて楽しいかというと、そこは現役の学習塾経営者として疑問を感じざるを得ません。
実際、評判が高い学習塾の中には、こだわり抜かれた独自の塾則があることも多いです。
塾則のこだわり具合は
塾選びのポイントにも
なりますよ。
例えばですが、どこの国にも法律ってありますよね。
もしも、とある国から一つ残らず法律が無くなったとしたら、その国は自由で素晴らしい国になるでしょうか?
なりませんよね?
絶対ヤバいですよね?
秩序も何もあったもんじゃない、いかついモヒカン野郎が「ヒャッハー!」と叫んで暴れ回る、荒廃した世紀末世界になる予感しかしません。
だいぶ古いイメージ
ですけど。
国みたいな大きな規模ではないものの、学習塾だって多くの人が集まる一つの社会空間である以上、無秩序で混沌とした場所になる可能性は十分にあります。
そうなると、学習塾にとって最大の仕事である「生徒の成績を上げること」も非常に困難です。
したがって、何は良くて何はダメなのか、教室でハッキリと規則・決まりを定めておくことは必要不可欠と言えるでしょう。
でも、じゃあどんな規則
が学習塾に必要なの?
そこで、当記事では一般的な対面式の学習塾に最低限必要な規則・決まりは何かを、3つにまとめて解説していきます。
また、塾則を設定する際の注意点についても後から紹介しますので、どうぞ最後までご一読くださいませ。
学習塾に最低限必要な規則・決まり
はじめに断っておくと、ぶっちゃけ絶対的に正しい塾の規則・決まりなんてものは存在しません。
集団指導か個別指導か、はたまた自立型個別指導かという指導形態が違うだけでも、ある塾で正しいことが別の塾では不適切ということは十分に有り得ます。
また、補習塾か進学塾かといった主な指導目的・指導内容によっても、塾則の良し悪しは変わってくるでしょう。
田舎か都会かといった
土地柄・地域柄も関係
しそうですね。
ただ、そうは言っても何の参考もなしに自分一人で規則を考えるのは大変ですし、後々になって余計な部分や抜け漏れなどが発覚するかもしれません。
その都度ちょっとずつ修正を加えていくというのもダメではないですが、頻繁に規則が変わると生徒達も戸惑うでしょうから、なるべくなら開業当初に最適な塾則をビシッと決めておきたいところです。
というわけで、以下では概ねどんな学習塾でも必要であろう決まり事に限定して、ギュッと絞って3つ紹介していきます。
これから塾を開業する予定の方はもちろん、既に開業済みの塾経営者の方や保護者の方も、ぜひご参考いただけたら幸いです。
それでは、どうぞ↓
他生徒の勉強・休憩を妨害しないこと
とりあえず、何をおいても最重要なのはコレですね。
といっても、なにも暴行のような物理的に妨害することは流石にないでしょうから、問題となるのは専ら騒音でしょう。
まぁ、塾内で生徒同士
による殴り合いの喧嘩
が起こらないとも限り
ませんけど…。
他の記事でも何度か主張していますが、学習塾に与えられた最大の使命は「生徒の成績を上げること」。
その使命を果たす際に必要となるのは、当然ながら勉強することです。
塾に通うだけで成績が上がるとか、そんな魔法のようなこと塾講師には到底できっこない!
ひたすらに勉強の量をこなして少しずつ質を高めていくことでしか、学力および成績の向上は有り得ません。
【関連記事】
「勉強は量と質どっちが大切か?」
学習塾において、生徒の勉強を妨げる一番の障害は騒音と言っても過言ではないでしょう。
実際、転塾する理由の中で結構な数を占めているのは
「今の塾がうるさくて勉強できないから」
もしくは、それによる成績不振です。
※統計データではなく、あくまで僕個人の感覚ですので、その点どうかご了承ください。
うるさいって言う当人
が実は一番うるさい
ということもあります
けど…(白目)
自分の塾で、そんな最悪の理由で退塾する子が出るのは絶対に嫌ですよね。
であればこそ、話し声などの音に関しては、何かしらの禁止・制限事項を設けるべきでしょう。
それは、授業中における生徒同士の私語はモチロン、休憩時間における会話の大きさ・トーンも考慮する必要があります。
「休憩時間まで!?」
と思う方もいるかもしれませんが、休憩時間は文字通り休憩する時間であって、騒ぐ時間ではありませんから当然です。
(友達同士で普通に会話する分には一向に構わないですけどね)
でも、その普通の会話が
普通にうるさい場合も
あるんだよなぁ…。
本来、学習塾は勉強するために最適の環境であるべきです。
学校や家、ファミレスなどと同じ環境であれば、わざわざ塾に通って勉強する価値は殆ど無いに等しいでしょう。
授業中や休憩時間が騒がしくて勉強に集中できないような塾は、教室内の治安や雰囲気が悪化し、生徒や保護者の評判も悪くなってしまいます。
こと地方や田舎においては、一度でも悪い噂が広まったら致命的です。
そうならないためにも、教室が騒がしくならないような規則の一つは必ず設けておくべきでしょう。
勉強に関係無いものを出さないこと
これは一見すると当たり前のことですが、規則・決まりが無かったら意外と守れない子は多いです。
カリスマ講師がいる塾
では、もしかして当然
守られていることなの
かもしれませんけど。
水筒やペットボトルといった飲料、軽食類などを机の上に置きっぱなしというのが、よく見るパターンですね。
(幸い、ゲーム機とか漫画といった論外なものを出す輩は、今までの経験では滅多に見かけません)
勉強と関係無いものが視界にあるだけで、そちらの方に少なからず意識が向いてしまう為、肝心の勉強に集中できなくなってしまいます。
中でも、最も人間の集中力を刈り取る悪魔の如しアイテムが
スマホ・携帯電話
学習塾におけるスマホ・携帯電話は、タバコの受動喫煙並みに周囲の人間を蝕む、まさに害悪そのもの。
所有者だけでなく他の
生徒の集中力も削ぐ、
特級呪物並みの危険物
ですね。
詳しくは過去記事で書いていますので今回は割愛しますが、未読の方は是非ご一読ください↓
スマホは別格ですが、他のものに関しても基本的な見解は同じです。
勉強に関係無いものを教室内に出しておくことは、リスクこそあってもメリットは殆どありません。
鞄の中から出さない、入室時に預かるなど、何かしらの規則・決まりを作って周知徹底すべきでしょう。
毎週一定の回数以上は通塾すること
えっ、それって
授業を沢山とれ
ってこと?
まぁそれでも良い
んですけど、別に
授業じゃなくても
大丈夫ですよ。
必要があって子ども本人にも十分やる気があるのなら、授業の回数を週3回とか4回にするのも良いでしょう。
しかしながら、子どものスケジュール調整や保護者の金銭的負担もありますので、多くの授業を無理強いすることは出来ません。
(塾の中には、授業回数が週1回とか週2回といった、回数が少ないコースを敢えて設定していないところもあるようですけど)
それでも、現状を打破して成績を上げる為には、最低でも週3~4回は通塾したいところです。
というわけで、授業で足りない分は自習で補いましょう。
今時は、殆どの塾で自習室を無料で開放していますから、保護者の方に金銭的な負担はかかりません。
もちろん、僕の塾も
自習室は常に開いて
ますよー。
基本的には、授業と自習それぞれ週1~2回程で、合計して週3~4回は通塾して欲しいですね。
過去記事で散々書きましたが、週1回とか2回の通塾で成績向上・順風満帆なんて、そんなものは幻想です。
小中学校の勉強では、何よりも勉強量を増やして徐々に質を高めていくことが大事ですので、下手な甘えや油断を許さないような規則・決まりを設けるのが良いでしょう。
※ただ、ご家庭の都合もあって頻繁に通塾することが難しい場合も多々あります。
具体的な回数や時間については、塾の立地や地域の実情なども踏まえて決めるのが無難ですね。
それでも、せめて学校の
定期テスト前は毎日通塾
して欲しいですけどね。
規則・決まりを設定する際の注意点
以上、対面式の学習塾に取り入れたい3つの塾則について紹介してきました。
これら3つは塾則に最低限必要なものであり、まとめられて結構ざっくりとした大まかな内容でしたので、表現を換えたり他にも規則を追加したりすることもあると思います。
(塾によっては、メチャクチャ細分化して何十個もの塾則を定めているところもありますからね)
講師の人達も全部は
覚えてなさそう…。
ですが、塾則を設定して生徒達に守らせる際には注意すべきことがあります。
何となく思いつくままに規則を設ければ、それだけ教室の雰囲気が改善したり指導の質が向上するといった、そんな都合の良いことはありません。
むしろ、下手な塾則をつくると、生徒達の間に不公平・不平等な状況を生み出してしまうでしょう。
これから新たに塾則を考える方、現状の塾則を見直そうとしている方は、ぜひ以下のことに気を付けて行動することをオススメします。
それでは、どうぞ!
できるだけ具体的に明文化すること
なるべく対象範囲を広げよう、もしくは表現を柔らかくしようとフワッとした内容の塾則にすると、どれだけ徹底しようとしても上手く機能しないでしょう。
例を挙げると
「授業中うるさくしないこと」
「できるだけ自習に来ること」
みたいな感じですね。
は? コレ駄目なの?
結構フツーじゃない?
別に駄目ってわけじゃ
ないですけど、大して
意味は無いですね。
上記のどこが問題かというと
「うるさくしない」
「できるだけ」
の部分です。
この2つの言葉は、どちらも主観的・抽象的な表現であり、絶対的な判断基準がありません。
うるさいと感じるかどうかは人それぞれですし、声のボリュームだけでなく高低によっても聞こえ方は変わってきます。
もし講師側がうるさいと感じなくとも、勉強する生徒達がうるさいと感じれば、それは紛れもなく騒がしくて集中できない教室です。
そもそも、うるさい子は自分がうるさいことを自覚していないですから、こんな塾則を知ったところで自制しようとは思いません。
マジそれな。
「できるだけ」というのも非常に曖昧で、人によって捉え方が違ってきます。
趣味の時間を減らさず無理のない範囲でいいのか、それともギリギリまで自由時間を削って自習すべきなのか、全く伝わりません。
こんなものは、自習室が無料開放されている塾で
「ドンドン自習に来てね♪」
と声をかけるようなものです。
そんなことを何百回と伝えたところで、大多数の生徒が自習に来ないということは、塾講師経験のある方なら想像に難くないでしょう。
マジそれな。
(2回目)
このようなガバガバ設定なら、回避する手段もいくらだってあります。
家で散々ダラダラして遊び尽したとしても、塾に来た時に一言「忙しかった」と言っておけばOK、余裕で言い逃れできるでしょう。
遊ぶ時間を削ってまで自習しに来ている子からすると、塾則に従って真面目に通塾する自分がバカみたいに感じたとしても仕方がありません。
結果、本来は素直に塾則を守っていた子であっても、だんだんと規則・決まりを破るようになってきます。
哀しいですが、これも
曖昧な塾則をつくった
塾側の責任ですね。
つまるところ、あまりに主観的・抽象的な塾則だと解釈の余地(抜け道)が出来て、生徒の間から不平不満や怠慢が生じるということです。
こんな欠陥だらけの塾則であれば、むしろ無い方が幾分マシでしょう。
なので、塾則を記載する際には
「授業中における生徒同士の会話は禁止」
「学期中は週に3回以上通塾すること」
というように、シチュエーションを限定して完全禁止にしたり、数字を使って明確に示すと良いですよ。
守らざるを得ない環境をつくること
法律というものは、警察が市街地の取り締まりを行わないと意味を成しません。
スポーツが成立するのも、単にルールがあるからではなく、審判が選手達の行動を常に見ているからこそでしょう。
同様に塾則も、塾講師が教室内の環境づくりに努めることで、はじめて上手く機能します。
大事なのは、完璧な塾則をつくることよりも、そんな塾則が守られて然るべきな教室環境を整えることです。
塾則が無くても秩序が
完璧に保たれている塾
は、この環境づくりが
上手いんでしょうね。
塾講師に求められるのは、塾則を守るのが当然という毅然とした態度をとり、塾則を破った生徒には厳しく指導すること。
塾則に反した行動をする生徒を叱らないのは、優しさではなく甘さであり、生徒の為にも教室の為にもなりません。
また、折角の塾則が形骸化してしまわないように、他のスタッフや生徒達と定期的に確認・共有することも重要です。
理想の状態は、教室内で講師が見張っていなくても、生徒達一人一人が塾則を守り勉強にだけ集中すること。
そんな状態をつくれるように、まずは講師が率先して塾則を遵守する姿勢を示し、少しずつ生徒全員の意識に浸透させていくのが良いでしょう。
僕も今一度、自分の塾
の塾則を確認して己を
省みたいと思います。
最後に
というわけで、いかがでしたか?
最後になりますが、どれだけ非の打ち所が無く完璧と思える塾則をつくったとしても、いつでも生徒全員に塾則を絶対遵守させるというのは非常に難しいでしょう。
それは、単に塾講師の能力的な問題だけではありません。
教室に集まる生徒達の学年層や一人一人の性格、指導形態や教室のレイアウト、地域柄など様々な原因が絡んでくるからです。
状況に応じた講師の
柔軟な対処も必要に
なってきますね。
それでも、全く塾則の無い、何が正しいのかハッキリしない状態よりは遥かに良いでしょう。
「塾則が無いと生徒に勉強させられないなんて、講師の指導力や統率力に問題があるのではないか?」
確かに、類い稀なカリスマ性を持った講師だったら、ルールがなくとも生徒に勉強を集中させられる
かもしれません。
しかし、そんな芸当が出来るのは極一部のエリートだけ。
そのような上位1%未満のトップオブトップの在り方を、僕を含めた99%を占める普通の人が真似しない方が良いでしょう。
99%の皆さん、もしも
失礼に聞こえましたら
誠にゴメンナサイ!
塾則は生徒達の自由を縛るものではなく、生徒達の学習環境を守るものです。
全ての学習塾で、塾則のもとに秩序が保たれた教室の中、生徒の皆さんが安心して勉強に集中できることを願っています。
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