皆さん、不登校ですか?
もしくは不登校でしたか?
ちょっと冒頭で聞くにはデリケート過ぎる内容でしたかね?
ただ、勘違いしてほしくないんですが、僕は別に不登校が悪いことだとは思っていません。
もちろん、理由にも依りますよ。
「宿題が嫌だから」なんて理由で不登校になるのはNGです。
それは完全に人生を舐めているとしか思えません。
単に今回の記事のキーワードが「不登校」で、何か読者の皆さんの気を引く冒頭文を考えていたらパッと思い浮かんだだけですから、あまり深く考えないでいただけると幸いです。
今回の記事では主に
①日本における不登校の現状
②不登校児童・生徒のための教育環境
について、統計データと塾講師である僕の主観を交えてお話していきます。
今や子どもの教育について考える際に欠かすことの出来ない課題となっている「不登校」について、ある程度の基礎知識を身に付けておくことは、小さな子供を持つ家庭や教育関係者でなくとも決して無駄なことではないでしょう。
それでは、順に見ていきましょう!
日本における不登校の現状
不登校の子って、そんなに多いの?
まぁ、まずはそこからですよね。
というわけで、最初に「日本における不登校児童の数」を統計データから見てみましょう。
不登校児童・生徒の数とその割合
参照させていただくのは天下の文部科学省が公開している
「令和元年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」
(な、長い……)
※一応リンクを貼りましたが、フツーに見たら難しすぎて読む気が失せる内容となっておりますので、今回は「不登校」に関するデータのみをピックアップしてお伝えしていきます。
(なので、リンク先は別に見なくても大丈夫です。てゆーか、こんなの真面目に読んでたら日が暮れるか日が昇ります)
【調査年度】
2019年度(令和元年度)
【調査対象】
全国の国公私立の小・中・高等学校
(ただし定時制高校は除く)
以下、学年別の内訳になります↓
小1:2,744人
小2:4,549人
小3:6,715人
小4:9,466人
小5:13,282人
小6:16,594人
中1:34,324人
中2:45,327人
中3:48,271人
高1:11,830人
高2:10,984人
高3:8,910人
合計:212,996人
という感じです。
資料では1991年度(平成3年度)以降の各年度のデータが載っていますが、小・中学生ともに過去最多の人数となっていました。
多いとは思うけど、規模が大きいから今一つピンとこないわねぇ…。
ですよねー。
なので、直感的に分かりやすい全児童・生徒に対する割合で見てみましょう。
すると単純計算ではありますが、約53人に1人の割合で不登校児童がいるということになります。
1クラスの最大人数は45人とされているので、多過ぎず少なすぎないクラスを想定すると2クラスに1人以上はいるということです。
※双子の出生数は毎年2万人前後ですので、全学年に双子が2万人いるとすると2万人×9学年=18万人と、おおよそ不登校児童の人数と同じになります。
つまり、不登校児童の人数と双子の人数は大体同じくらいということですね。
皆さんの周りに、双子の子達はいませんでしたか?
不登校の子も、それと同じくらいの割合だけいるということです。
そう考えると、皆さんの周りにいても全く不思議ではないと思いませんか?
また、上記のデータを見ると、特に小学6年生から中学1年生へと学年が上がると倍以上に急増しているのが目を引きますね。
この理由は割と想像しやすいんじゃないでしょうか?
注目すべきは小学校から中学校へと進学している点です。
単に学ぶ場所が変わるというだけではなく、授業の難化や部活動の開始、新しいクラスメイトとの出会い等々、環境が大きく変化したことによる心身のストレスが主な原因と考えられています。
逆に、中学校から全日制の高校へ進学すると激減し、さらに学年が上がるにつれて徐々に減少しているようです。
これは、義務教育期間を終えることによって、通信制高校などへの転校・編入や中退といったように、不登校になる以外の別の進路を見出すことができるからでしょう。
高校では不登校になりにくい環境が備わっているんですね。
このことは後で詳しく見ていきますね。
不登校になる主な原因
では単刀直入に
なぜ不登校になると思いますか?
やっぱり「いじめ」じゃないの?
TVでもよく特集されてるし。
ですよねー。(2回目)
僕も漠然と「不登校=いじめ」だと思っていました。
実は先程の統計データの中に「不登校の主な原因」について調査したものがあったので、小中学校の結果を見ていきましょう。
不登校の主な原因
【小学校】
いじめ…0.4%
クラスメイトとのトラブル
(いじめ除く)…10.2%
教職員とのトラブル…2.4%
成績・進路の不安…4.6%
学校への不適応…3.3%
家庭でのトラブル…22%
生活リズムの乱れや非行、
無気力など…51.4%
その他…5.6%
【中学校】
いじめ…0.3%
クラスメイトとのトラブル
(いじめ除く)…17.2%
教職員とのトラブル…1.2%
成績・進路の不安…9.8%
学校への不適応…5.9%
家庭でのトラブル…12.3%
生活リズムの乱れや非行、
無気力など…48.1%
その他…5.4%
※上記の割合は概算なので、合計値は100%から若干ズレています。
いじめ少なっっ!!?
確かに意外ですね。
きっと同じような感想を持った人も多いのではないでしょうか?
ただ、小中ともに10%超えの「クラスメイトとのトラブル(いじめ除く)」はちょっと怪しい気がしません?
「いじめ」かどうかは本人の主観に依りますが、おそらく中には
・いじめだけど恐くて本当のことを回答できなかった
・いじめだけど当人が違うと思い込んでいる
というような、一般に「いじめ」に該当するような状態のものもあるでしょう。
むしろ「いじめ以外のトラブル」って何でしょう?
それも不登校の原因になる程のものって…?
また、小中ともに50%前後と一番割合が高いのは「当人の生活リズムの乱れ、非行、無気力など」と、本人の心的不調が原因のものでした。
「家庭でのトラブル」も小中ともに高めの割合となっています。
しかし、この結果はあくまで主な原因であって、実際には上記の原因がいくつも重なって不登校になる場合が殆どです。
不登校は、どれか一つの原因を無くせば解決するような単純なものではありません。
上記の結果は参考程度に留めておき、実際の不登校児童・生徒に接する際は、一人一人の置かれた状況と真っ直ぐ真摯に向き合い、その子が望む形の解決方法を一緒に考える必要があるでしょう。
学校にいるスクールカウンセラーや各都道府県に設置された児童相談所など、頼れる専門の方々が沢山いるのは心強いですね。
不登校児童・生徒のための教育環境
ここまでは、日本における不登校の数とその主な原因について見てきました。
しかし、不登校の主な原因が判明していても、なおこれだけ多くの不登校児童・生徒がいるというのもまた一つの現状です。
不登校は、それだけ根深い問題であり解決に時間を要するものだということでしょう。
それでは、不登校から立ち直るまでの長い間、子どもに教育の機会を与えることは出来ないのでしょうか?
そこで以下では、不登校の子でも受け入れられる可能性のある教育環境をいくつかピックアップしました。
不登校の子が周囲にいるという方の参考になれば幸いです。
※小中学校までの義務教育期間であれば不登校でも卒業できる場合が多いので、どうしても受け入れ先は高校生以上が対象の場所が多くなっています。
その点はどうかご了承ください。
定時制高校
定時制高校は9割近くが公立で、中学校を卒業した子だけでなく、学業を学び直す目的を持った社会人なども通うことの出来る学校です。
一般的な全日制高校との大きな違いは“単位制で通学時間を選択できる”という点。
※高校によっては3年間または4年間の学年制だったり、午前~昼間は全日制の生徒が通っているため夜間のみ運営していたりと、事情が異なる場合があります。
全日制高校と比べると時間の都合がつけやすく、一日の授業時間が短いので、通学の負担は少ないでしょう。
ただ、基本的に平日は毎日通うことになり、入学時期が決まっていて入学試験もあるため、少しハードルが高く感じる方もいるかもしれません。
「全日制高校には抵抗を感じるけど、それに近い環境で勉強したい」という人に向いていると言えますね。
なので、何も考えずに入学して不登校になるという人がいるのも事実です。
先に挙げた文科省の統計データでは、あえて定時制高校における不登校の数は除いていました。
改めて、定時制高校のみ抜粋して見ると
高1:948人
高2:743人
高3:607人
高4:435人
単位制:10,144人
というように、不登校となる生徒が少なからず存在しています。
通信制高校
通信制高校は、私立が7割程で単位制が多く採用されている高等学校です。
特筆すべき特徴は
自宅学習が中心であまり通学しなくていい
こと、そして
入試の多くは書類選考と面接のみで学力試験は無い場合が多い
という2点。
決まった時間に集団で学習する必要がないので、自分のペースで勉強を進められるのは大きな魅力ですね。
定時制高校よりも更に入学や学習のハードルが低いので、その分だけ不登校になる心配も少ないでしょう。
卒業すれば、ちゃんと全日制高校と同じ卒業資格が得られますよ。
ただし、卒業するには必要な単位を取得した上で3年以上在籍することが必須となりますので、入学を検討される際には注意して下さい。
教育支援センター
「適応指導教室」とも言い、殆どが市町村の教育委員会が運営する公的機関です。
僕が暮らす穴水町にも「やすらぎ穴水教室」という名称で運営されていますね。
主に不登校の小中学生を対象としており、学習支援の他にも体験活動やレクリエーションなどが行われています。
(少数ですが高校生も在籍しているので、受け入れ可能かどうか知りたい場合は各施設に直接お問い合わせ下さい)
市立の学校教諭や臨床心理士などのカウンセラーが常勤職員となっていることが多く、面談によるカウンセリングや教育相談なども定期的に実施されているから何となく安心感がありますね。
しかし、学習カリキュラムが決まっていない所が半数以上あるようなので、場所によって学習の質に若干のバラつきが見られそうです。
また、未だ30%以上の自治体では予算や場所の関係で教育支援センターが設置されていません。
通級を考える際は、まず施設の有無を確認する必要があるでしょう。
学童保育
厚生労働省では「放課後児童クラブ」という名称で呼ばれ、放課後や夏休み等の長期休暇に遊びや勉強、生活の場を提供する施設です。
公的機関が運営するものと民営機関が運営するものがあり、場所によって管轄する省庁・法人も異なります。
「学童」とか「児童」と名前が付いているように、対象となるのは小学生のみですのでご注意ください。
一人親や共働きで忙しい保護者に代わって放課後の子供を預かってくれるため、近年需要が非常に高まっています。
しかし同時に、施設側の人手不足が原因で希望しても利用ができない「待機児童」が増加して問題となっている事は、ニュースや新聞で見たことがある方もいるのではないでしょうか?
ですので、場所によっては子どもの人数に対して施設職員の人数が極端に少なく、一人ひとりの子に目が行き届かなくなっている可能性もあるでしょう。
フリースクール
アメリカやイギリスにおける学校教育が発祥ですが、日本では大きく意味合いが異なります。
日本におけるフリースクールとは、個人や法人によって運営されている民間機関で、主に不登校や引きこもり、障害といった何らかの事情があって学校に通えない子ども達の居場所となる施設のこと。
国の法制度によって細かな規則が定められているわけではないので、経営目的や活動の主旨は個々の施設によって様々です。
かっちりしたプログラムや学習カリキュラムがあるわけではないので、子どもの自主性・主体性を尊重した自由な活動を行えるところが大きな特徴と言えるでしょう。
入学資格がないという点も、学力や対人能力に不安がある子には安心ですね。
ただし、フリースクールに通うだけでは卒業資格を得られません。
(まぁ民間機関なので仕方ない)
と言っても、小中学生であれば義務教育なので、もとの公立学校に在籍した状態であれば出席日数に関わらず卒業できるでしょう。
(校長先生の性格がよほど悪くない限り)
問題は高校生です。
もし今後大学へ進学する場合には、定時制・通信制高校を卒業して高卒資格を得るか、「高等学校卒業程度認定試験」を受験して高卒認定を取得する必要があります。
高卒認定の方だと最終学歴は「中卒」になりますから、就職を希望される方はお気を付け下さい。
学習塾
最後はあまり一般的ではないですが、教育機関として受け入れの可能性があるため挙げさせていただきます。
まぁ僕が塾の先生だからっていう個人的な意味合いも多々ありますけどね☆
塾というと受験指導を行うような進学塾を想像される方が多いかもしれません。
しかし、学校の授業の復習をメインで行う補習塾や、不登校児童、発達障害児童などを対象とした専門の塾が存在します。
そういった塾では、指導形態も集団指導ではなく一人ひとりの寄り添う個別指導であることが殆どです。
進学塾の場合にありがちな入塾試験もありませんので、まずは事前に電話で相談するのがいいでしょう。
ちなみに、僕の塾では受け入れるかと言うと……「お子さんの状況に依ります」としか言えませんね。
最後に
冒頭でも書きましたが、僕は別に不登校が悪いことだとは思っていません。
(「宿題が嫌だから」は除く)
生活も教育も多様化が進む現代において、何が正しいかは人それぞれです。
(「宿題が嫌だから」は除く)
不登校の子どもが本当に不登校のままを望むのであれば、それでも良いと思います。
ただ、もしも子どもが不登校の自分を変えたいと願う時がきたら、その気持ちを尊重して適切な教育環境を用意してあげるべきではないでしょうか。
いつでもどこでも、全ての子どもが十分な教育を受けられる幸せな未来が来ることを願って、この記事の締めとさせていただきます。
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