これから学習塾を開業する予定の皆さん。
塾の対象学年はもう決めました?
「できるだけターゲット層を広げたいから小学1年生~高校3年生」
と安易に決めてはいないでしょうか?
確かに、規模が大きい大手の中にはそういった塾もありますし、何なら幼稚園児も対象にしている所もありますね。
僕が以前に勤めていた塾
もそうだったなぁ。
しかし、個人で起業・独立してすぐに規模の大きな塾を起ち上げるというのは現実的ではありません。
当面の間は自分一人で運営するという方が殆どでしょう。
そうなると、ある程度は対象学年や指導科目、生徒の学力層などを絞る必要があります。
例えば
進学塾であれば小学5・6年生や中学3年生、高校3年生といった受験学年に募集を限定する。
補習塾であれば学校の定期テストが平均点以下の子だけを対象とする
専門塾であれば数学に特化して小学校~高校の内容を体系的に教える
といった感じです。
(塾の種類と特徴については過去記事をご参照ください↓)
こちとら既に受験経験済み
の社会人なんだし、全学年
全科目でも大丈夫っしょ?
それは甘い、
甘過ぎるっ!
全学年を募集するということは
中学受験をする生徒
高校受験をする生徒
大学受験をする生徒
それ以外の生徒
これら全ての指導を同じ年度にするということ。
どの受験も経験したからといって、中学受験・高校受験・大学受験を全て同時に経験した人はいません。
生徒が志望する可能性のある中学・高校・大学それぞれの学校調べ、過去問分析、受験日当日までの学習計画その他諸々の受験対策を一人で出来ますか?
少なくとも僕には
到底無理ですね。
(教務スタッフが複数いて担当分けできるのなら別ですが)
そんなわけで、本記事では
「個人塾の対象学年を決めるポイント」
について、国の調査データや私ゆうき塾長の経験に基づいて解説していきます。
「学習塾を開業しようと思っているけど、対象学年が定まらない」
という方は、ぜひ最後までご覧くださいませ。
文部科学省の調査から見る学習塾費
まずは統計データから学習塾に理想的な対象学年を考察していきましょう。
平成30年度に文部科学省が行った「子供の学習費調査」によると、小学校・中学校・高校いずれも基本的には学年が上がるにつれて学習塾にかける金額は増加傾向にあります。
学年が上がるにつれ、
学習内容が難しくなる
からですかね。
以下それぞれの詳しい結果をご覧ください。
小学校における学年別の学習塾費
【公立小学校】
1年生:17,991円
2年生:30,278円
3年生:40,629円
4年生:47,773円
5年生:84,579円
6年生:96,289円
【私立小学校】
1年生:114,425円
2年生:121,978円
3年生:162,612円
4年生:257,528円
5年生:384,113円
6年生:485,494円
全体で見ると、公立学校よりも私立学校の方が平均で約4.7倍も多く学習塾にお金をかけているようです。
また、公立学校では、4年生から5年生に上がると学習塾にかける金額が約1.8倍と急増。
一方、私立学校では3年生から4年生に上がったタイミングで約1.6倍に急増しています。
私立の小学校は受験競争
が激しいから、もしくは
親の教育意識が高いから
ですかね。それにしても
エグい金額…。
公立学校の4・5年生で金額が増えているのは、中学受験への意識が高まってくるからでしょう。
加えて、算数は4年生あたりから、理科社会は5年生から特に学習内容が難しくなってくることも関係していると思います。
(小学校の学習内容については以下の過去記事をご参照ください↓)
この調査データをもとに、塾における小学生の対象学年を考えると、少なくとも4年生以上は対象にした上で5・6年生は受験指導にも対応しているのが望ましいですね。
中学校における学年別の学習塾費
【公立中学校】
1年生:110,774円
2年生:178,408円
3年生:313,780円
【私立中学校】
1年生:117,141円
2年生:156,644円
3年生:186,569円
全体で見ると、私立学校よりも公立学校の方が平均で約1.3倍ほど多く学習塾にお金をかけています。
また、公立中学校では2年生から3年生に上がると学習塾にかける金額が約1.8倍と急増。
一方、私立中学校では学年が上がることによる増加幅に大差はありません。
私立は中高一貫校が多く
受験が無いからかな。
公立中学校における3年生の金額が増えているのは、6月~7月で部活動が終了してから本格的に受験勉強を始める子が多いからだと考えられます。
それに、3年生の学習内容には、どの科目も難しい単元が多いというのも一因でしょう。
(中学校の学習内容については以下の過去記事に詳しく書いていますので、よろしければ是非ご覧ください↓)
この調査データから考えると、塾における中学生の対象学年は少なくとも3年生はマストで、かつ受験指導を念頭におく必要がありますね。
高校における学年別の学習塾費
【公立高校(全日制)】
1年生:71,534円
2年生:98,567円
3年生:150,650円
【私立高校(全日制)】
1年生:85,200円
2年生:120,636円
3年生:183,807円
全体で見ると、公立学校よりも私立学校の方が平均で約1.2倍ほど多く学習塾にお金をかけています。
また、公立学校・私立学校ともに2年生から3年生に上がると学習塾にかける金額が約1.5倍と急増。
大学受験は公立でも私立
でも、大きな違いが無い
からですかね。
一方で、1・2年生の方はいずれも中学校よりも金額が少ないようです。
これは、学校の授業や補習、部活動に充てられる時間が中学校の頃よりも多いため、学習塾に通う時間的な余裕が無いというのが一因かと思われます。
この調査データをもとに考えると、高校生も中学生と同様に3年生の受験指導が塾の主要な役割となるでしょう。
個人塾の対象学年を決めるポイント
さて、続いては上記の調査データに加えて私ゆうき塾長の経験をもとに、個人塾の対象学年を設定する際のポイントをご紹介します。
これから開業を考えている方はモチロン、来年度に向けて経営の見直しを行っている方も是非ご参考にして下さい。
それでは、どうぞ!
小学1~3年生は要注意!
何で? 学校の勉強が
難しくなるのは4年生
からなんでしょ?
だからこそです。
まだ学習内容が比較的難しくないにも関わらず塾に通おうとするということは、それだけ強烈に苦手ということ。
それ程までに算数・国語的な力が弱い、もしくは集中力や理解力が低い子を相手に、成績や勉強姿勢を向上させるのは並大抵の指導力では不可能です。
分かりやすく教える力だけでなく、小さな子とも信頼関係を築けるコミュニケーション能力や、状況に応じて適切に叱る・褒めるといった対応力など、多くの能力が求められます。
でも、本当に勉強が苦手
とも限らないでしょ?
確かに、あくまで保護者がそう感じているだけで、実際は人並みにできているかもしれません。
ですが、だとすればそれは保護者が子供の学力を正しく認識できていないか、もしくは子供に求める学力が異常に高いかのどちらかでしょう。
その場合は子供への指導よりも先に保護者との話し合いが必要となります。
そうしなければ、たとえ塾側が正しく指導していると思っていても、保護者の理想に届いていなかったり正確に伝わらなかったりする可能性があるからです。
つまり、小学校低学年の子供を指導する際には、他学年の場合よりも遥かに密な繋がりが塾・保護者・子供との間に求められるということ。
まぁ一言でいえば
メッチャ大変
ってことですね。
なので、低学年の指導に全力を注ぐ覚悟と熱意がない限りは、上記調査データのボリュームゾーンである4~6年生に指導対象を絞った方が良いでしょう。
高校生は対象を絞るべし
高校は履修科目が多く、一人や二人の講師で全ての科目に対応するのは困難です。
文系の講師が理系科目の指導をするのは苦痛以外の何ものでもありませんし、理系だからといって物理・化学・生物・地学の全てを指導できるわけでもありません。
逆もまた然り。
中学内容までなら一人で全科目対応することも不可能ではないでしょうけど、こと高校内容となったら話は別です。
特に大学受験も見据えた指導ともなると、大学調べの量や学習内容の難易度など、かかる時間や必要なスキルがハンパじゃない!
ですので、仮に文系・理系の講師2人体制だとしても全科目を見ることは現実的ではないでしょう。
まぁ一部の塾では苦痛以外
の何ものでもないことを
平然とやらせているとか
聞きますけど…。
僕の経験に加えて調査データから見ても、義務教育でもない高校生で塾に通う子の十中八九は受験対策が目的です。
個人塾として一定以上の質を保つためにも、少なくとも対象学年・指導科目・学力層のいずれか一つ以上は絞って募集するのが良いでしょう。
地域性や周辺環境も考慮する
都市部・郊外・田舎といった市町村内の人口や発展具合などは、塾の開業地を決める段階で既に色々と検討したことでしょう。
子供の数や地域の将来性
を調べるのに欠かせない
情報ですからね。
ただ、そういった地域データを考慮して塾の立地を決めたとしても、必ずしも想定通りの集客が望めるとは限りません。
なぜなら、それらのデータから大まかな子供の数は分かっても、塾の需要・見込み客数を知ることは困難であり、
保護者の教育観
子供達の勉強意識
受験競争の激しさ
など、肝心の塾へ通う要因となるものは、地域性や周辺の環境から少なからず影響を受けるからです。
通塾エリア内にある学校の種類や規模、各学校ごとの偏差値・進路状況、学校外で勉強ができる施設の有無。
そういった学習環境の他に、その地域で長い時間をかけて培われた共通の価値観も子供達の教育方針に関わるため、開業前から完璧な需要の想定をすることは不可能と言っても過言ではありません。
長く住んでいて地域事情を把握している場所や地元であれば別ですが、そうでなければ開業後に入塾した生徒・保護者から地域の情報を仕入れることをオススメします。
そして、もし現行の対象学年に不都合があるようであれば、次年度以降から変更することも検討してみましょう。
もちろん、検討する際は
既に通ってくれている塾生
のことを十分に考慮した上
で決めて下さいね。
最後に
というわけで、いかがでしたか?
ちなみに、僕の塾では
【対象学年】
小学4年生~中学3年生
【指導科目】
英語
算数(数学)
国語
理科
社会
となっています。
(中学・高校受験指導も受け付けていますし、学力制限は特にありません)
当塾の詳細は以下の塾ホームページに記載されています↓
自分一人で経営・指導していくにはこれが限界かなぁというのが個人的な結論です。
※正直、これでも中学受験と高校受験を一人で指導するのでメチャクチャ大変になるのが想定されます。
うちは田舎で中学受験
のある学校がないから
これでも何とか運営
できる感じですね。
中学・高校受験ともに競争の激しい地域であるのなら、対象学年をもう少し絞った方が良いでしょう。
ただ、あまり絞り過ぎると見込み客が少なくなってしまうのもまた事実。
集客が上手くいかず、経営が立ち行かなくなってしまっては元も子もありません。
あくまでも本記事の内容は参考程度に留めておき、最終的には自分で自信と責任を持って指導できる範囲を見極めて設定して下さい。
皆さんが理想とする教育を実現できることを願っています。
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